2023.03.19

導入事例とは「稟議申請」段階で最も重視されるコンテンツ

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導入事例とは「稟議申請」段階で最も重視されるコンテンツ

インターネット技術の普及により、製品やサービスを購買する際には、ネット検索やSNSでの情報収集が一般的になりました。検索により製品やサービスについて情報収集や比較検討を行います。この際に、実際のユーザーの声「レビュー」や「クチコミ」は不可欠です。

企業や団体などの組織の購買では、導入事例が重視されています。本記事では、株式会社ブイキューブのマーケティング本部長として年間40件の導入事例を制作してきたGAXマーケティング株式会社の佐藤岳が導入事例について詳しく解説します。

受注を呼び込むBtoB導入事例の作り方【インタビューとデザインのテンプレート付き】

導入事例とは

導入事例とは、製品やサービスを導入した顧客の声をまとめた事例です。導入検討プロセスで読まれる貴重な情報源です。特に選定ポイントや選定理由が重視される「稟議申請」の段階では最も参考にされています。

導入事例はバイヤーの購買を支援(バイヤーイネーブルメント)します。今さら聞けない「導入事例とは?」なぜ導入事例が必要なのか、導入事例の書き方、導入事例の効果について

導入事例のキーワード検索需要は、5月と8月〜10月に増加傾向

キーワードの検索需要の推移をグラフや数値でチェックできる「Google トレンド」を使い、2020年〜2022年の3年間で「導入事例」のキーワード検索需要を調査しました。1年間を通じて一定程度検索されていることが分かりますが、5月、8月〜10月に増加する傾向があります。検索キーワード「導入事例」の検索ボリュームの推移リード数は1.5倍へと成長。お客様、営業担当からも喜ばれる「導入事例」はいかにして生まれたのか?

「導入事例」は「IT用語」と一緒に検索される

Googleなどの検索エンジンの検索窓に「導入事例」と入力した際に、一緒に検索されているキーワード(サジェストワード)を調査しました。IT製品やIT用語に関するキーワードと一緒に検索されています。

導入事例のサジェストキーワードの一覧。IT用語、IT製品名が多い傾向

BtoBバイヤーは自ら購買プロセスを進んでいくというのは本当なのか?お客様のリアル閲覧履歴を公開

導入事例が「稟議申請」段階で最も参考に

GAXマーケティングとアイティメディアで行った共同調査によると、導入事例は、製品・サービスの導入検討の「稟議申請」段階で最も参考にされていました。導入事例では、顧客が抱えていた課題の内容、解決策の模索、比較検討と評価選定、導入後の感想などが顧客自身の肉声による一人称で語られます。そのため、その導入事例を読む買い手の立場として共感しやすく、高い納得感を得やすいコンテンツだと言えます。

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受注を呼び込むBtoB導入事例の作り方【インタビューとデザインのテンプレート付き】

導入事例では、「選定ポイントと選定理由」を重視

導入事例に含まれる項目の重要度としては、「選定ポイントと選定理由」が導入効果と課題に次いで重視されていました。それにもかかわらず、公開されている導入事例の多くには「選定ポイントや選定理由」が含まれていません。

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製品・サービスの導入検討に関するアンケート調査報告書 - Speaker Deck

自社と同じ業種・業界、同規模の企業の事例を重視

導入事例の読者は、自社と同じ業種・業界で、かつ同規模で自社と同じ課題を持つ会社の成功事例を重視しています。著名な企業の事例よりも、より身近な企業の事例を探しているのです。
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GAXマーケティングとアイティメディア 「導入事例タイアップ」の提供を開始

4本〜6本の導入事例が導入検討時に読まれています

製品やサービス導入検討時に読まれる導入事例は、1本〜3本が41.6%、4件〜6件が、42.7%となっていました。同じ業種、同じ規模、自社と同じ課題を解決したい事例をある程度読まれていることがうかがえます。
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元朝日新聞のスポーツ記者が米国「コンテンツ・マーケティング」イベントで心打たれたこと

導入事例はWebページとPDFが重視されています

導入事例の読者が必要としているフォーマットは、重要度が高い順に「Webページ」、「導入事例パンフレット(PDF)」、導入事例冊子(PDF)、導入事例ビデオ、導入事例冊子(紙カタログ)、導入事例パンフレット(印刷物)となっています。導入事例ビデオは、それほど重視されていない点が興味深いです。
導入事例フォーマットでは、Webページ、PDFが重視されています。

年間40件の導入事例を内製してきた元本部長が共有する効率的な導入事例の作り方

導入事例に不可欠な要素

読者の目線で、自社と同じような企業や団体が、自社と同じような課題を解決した事例が効果のある導入事例になります。

盛り込む要素は「製品やサービスの選定ポイント」や「選定理由」と「導入効果」、そしてどのような成果が出ているかをわかりやすくまとめるには、業種・規模や事業内容などのプロフィールも必要です。

その上で、どのように活用しているかといった内容が欠かせません。
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導入事例は「コンテンツの王様」!お客様が読みたい導入事例とは?

導入事例は、顧客がバリュープロポジションを説明してくれます

導入事例では、顧客自身の言葉や表現で、抱えていた課題とその解決した方法、製品やサービスについて紹介します。実際に抱えていた課題、課題解決のために収集した情報、製品やサービスの比較検討や選定時の評価ポイント、それらから何が購入の決め手になったか等が語られます。

つまり製品やサービスの導入により課題を解決した実例は、同じ課題を持つ顧客が求めている「価値」と自社だけが提案できる「価値」が一致する「バリュープロポジション」であり。導入事例はそれをお客様の声で表現したコンテンツなのです。

これが、導入事例が「コンテンツの王様」と言える所以です。

バリュープロポジションとは、自社だけが提案できる価値導入事例のページ構成

読者の情報ニーズに応える導入事例は、顧客が抱えていた課題と解決法解決法の選定ポイントや選定理由どのように使っているか、という点をお客様の声を交えながら、ぱっと見ただけで直感的に伝わるように表現することが重要です。

導入事例インタビューという手法も否定はしません。じっくりと読み込めば、お客様のストーリーを理解できます。その一方、お客様が情報収集している時は、あまり時間がないケースが多いのが事実です。パッと見て、ポイントを掴んで、興味がある箇所を詳しく読む、このような読み方ができる導入事例フォーマットが求められています。
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導入事例アップデートで同業種の案件数が増加。お客様から「100部ください」と言われる導入事例の中身とは?!

導入事例のキービジュアルは、顧客の事業を象徴するがおすすめ

多くの導入事例では、キービジュアルに顧客の「集合写真」が使われています。サービス導入に関わったご担当者の満足が伝わります。一方で、事例取材先の企業の業種や取り組みが伝わりにくいという課題があります。

GAXマーケティングは、導入事例のキービジュアルに、取材先の企業が、どのような業種や業態のお客様の事例なのか、ぱっと見でわかるビジュアルの掲載を推奨しています。

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 導入事例コンテンツはどうやって制作を進めていけばいいですか?

「利用シーン」を導入事例のキービジュアルにしているケース

導入事例のキービジュアルに「利用シーン」を掲載する手法もあります。製品・サービスをどのように使っているのか、ストレートに訴求しつつ、顧客の業種や事業内容も伝えることができます。
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8割のお客様から導入事例の取材OK!効率的に導入事例を制作する方法

導入事例を業種で色分けすると見映えがよくなります

​​導入事例パンフレットのデザインにおいては、業種別でフォーマットデザインを色分けをすることで、業種別の事例集を簡単に作ることができます。また、同じ製品の事例を並べてみると、様々な業種で導入されていることをビジュアルで表現できます。

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メール配信だけがMA活用ではない。リアルタイムとパーソナライズで案件を爆増させたHubSpot活用術とは?

設置場所やレイアウトを確認できる「テレキューブ」の導入事例

​​スマートワークブース「テレキューブ」の導入事例パンフレットを並べてみました。同じ製品でも製品の種類、導入台数、設置場所は様々です。このように、同じ製品でも様々な使い方を導入事例のキービジュアルで表現できます。

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「導入事例」から案件創出や受注獲得などの成果を出すには?

自治体での導入が多い、危機管理ソリューションの導入事例

​​自治体での導入が多い株式会社ブイキューブの危機管理ソリューションの導入事例です。自治体のカラーで色が統一されていますが、一部、民間企業で導入されていることもパッと見で伝わります。

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運用型広告に匹敵!タイアップ記事広告の取り組み内容と成果について

導入事例は、顧客属性×課題で作成

導入事例の読者は、自社と同じような企業や団体が、自社と同じような課題を解決した事例を探しています。読者と同じ属性(セグメント)に合致した導入事例を制作し公開することが不可欠です。

属性(セグメント)は、業種、規模、地域という点がポイントになります。課題は、顧客の課題、解決策、業種内容などで検討します。

導入事例の制作軸は、企業の属性と課題の掛け合わせ

導入事例の制作、公開状況を振り返ってみましょう

導入事例の制作軸を定めたら、現時点での導入事例の制作や公開状況を以下の表のように整理してみます。そうすると、導入事例を制作できているセグメントと、全く制作できていないセグメントを可視化できます。この制作状況を踏まえて、事例制作の優先順位を検討し、計画的に作成しましょう。

導入事例の制作状況の振り返り(例)、従業員数と業種で集計

導入事例PDFのダウンロードフォームを設置

導入事例を読んでいる読者に、その内容のPDFのダウンロードを提示しましょう。導入事例の読者はWebページとあわせてPDFも希望しています。HubSpot CMS HubHubSpot Marketing Hub を利用することで、導入事例ページにダウンロードフォームを設置できます。導入事例ダウンロードのハードルを下げるためにも、取得する項目はメールアドレスだけにしましょう。

K12-010-saitama-fd-pageさいたま市消防局 様 緊急対策ソリューション 導入事例ページ

導入事例ページのポップアップフォームで、メールアドレスを取得する場合のページ遷移(例)

導入事例PDFダウンロード時にメールアドレスを取得

導入事例PDFをダウンロードされた方へ関連メールを自動で配信

導入事例PDFをダウンロードされた方に、関連する導入事例をご案内するメールを自動送信します。HubSpotを活用した導入事例PDFをダウンロードされた方へのナーチャリング(例)導入事例を紹介するメール内容については、CRMに登録されている業種と同じ業種の事例を紹介するメールを自動送信した場合と、導入事例PDFと同じ業種の導入事例をご紹介するメール送信した場合では、後者の方が圧倒的にクリック率が高いことが判明しました。

「大学」関係者へ「大学」導入事例のメール送信結果。PDFダウンロード後のメール送信の方が、クリック率が高い

来訪者の業種や地域の導入事例をWebで紹介

CRMに登録されている顧客の業種や地域、または、ダウンロードされた事例の内容に応じて、同じ業種や地域の事例をWebページで表示することで、導入事例ページへの遷移率やPDFダウンロード率、問い合わせの獲得率が高い傾向にあります。

見込顧客と同じ業種の事例をトップページで表示しているケース

建設業のお客様が来訪された際には、建設業の導入事例を表示。流通小売やサービス業などの多店舗展開事業者のお客様が来訪された際には、多店舗展開事業者の事例を紹介します。

来訪者と同じ業種の事例をWebページで表示している例

見込顧客と同じ地域の事例をトップページで表示しているケース

来訪者の地域に応じた事例を表示するケース。北海道のお客様事例を表示し、九州地方のお客様が来訪されたら九州地方のお客様事例を表示しているケース。

来訪者と同じ地域の事例を表示しているケース

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佐藤 岳

2000年より事業会社とサービス提供会社で営業、マーケティング担当者としBtoBマーケティングに従事し実績多数。2015年11⽉株式会社ブイキューブ⼊社。2016年4⽉〜2020年12月までマーケティング本部長として商談案件の創出を担当。コンテンツの企画制作、広告運⽤、アナリティクスを完全内製化し商談の創出、受注に貢献。得られた知⾒やノウハウ・ドゥハウを提供するBtoBマーケティング総合⽀援サービスGAX(ガックス)を2020年1⽉より提供開始。