2021.06.25
導入事例アップデートで同業種の案件数が増加。お客様から「100部ください」と言われる導入事例の中身とは?!
- 導入事例
導入事例の制作にお悩みを抱えている方は少なくありません。GAXマーケティング株式会社 佐藤岳が本部長を務めていた、株式会社ブイキューブでも同じ課題がありました。この記事では、実際にブイキューブではどのように導入事例の改善に取り組み、案件化に繋がる導入事例が生まれるようになったのかを、具体的なポイントを交えながらご紹介いたします。
関連記事:受注を呼び込むBtoB導入事例の作り方【インタビューとデザインのテンプレート付き】
効果の薄かった「導入事例」をどのように改善していったのか
2016年5月当時、導入事例における課題は大きく2つありました。1つめは体系的、計画的に導入事例を制作できていませんでした。
営業活動の効率化を図るのであれば、いま自社にどういった企業のお客様が足りていないのか、また営業サイドではどういったお客様にアプローチしたいのかをもとに、導入事例を制作すべきです。しかし、当時は「どういった企業の導入事例を増やすべきか」といった考えがなく、行きあたりばったりでの制作していました。
そのため、これまで制作した導入事例企業の従業員規模や業種別にマッピングすると、ある業種ではまんべんなく導入事例をつくれているのに対し、別の業種ではまったく導入事例を制作できていないなど、バラつきがある状態となっていました。
そして2つめの課題が、そもそもでわかりづらい導入事例となっていました。当時の導入事例は、テキストがびっしりと敷き詰められており、どういった課題を解決したのか、どういった業種の事例なのかがひと目でわかるものになっていませんでした。
下記の図が、実際のビフォーアフターの比較です。たとえば導入事例企業の社名を知らない方にとっては、どんな会社が導入したのかひと目でわからないでしょうし、ブイキューブの製品名を知らない人には、固有名詞を並べられても、結局なにを解決してくれる製品なのかを、しっかりと読み込まないとわからないという状態でした。
そこで導入事例のフォーマットを刷新。新しい事例では写真を大きく掲載し、タイトルと写真でどういった業種の事例で、どういったシーンで活用されているのかがひと目でわかるように改善しました。
また、一字一句読み込まなくても、どういった課題が解決され、どういった効果が生まれているのかを1枚目でわかるデザインへと変更。そして、課題に対してどういったアプローチをすべきかといったナレッジを次のページで紹介するなど、構成の見直しを行い、A3見開き2ページだった導入事例を、A4サイズで4ページのものへと変更しました。
細かな工夫としては効果的だったのは、業種ごとにカラーリングを分けたことです。単純に営業担当は、カラーリングによって導入事例を管理しやすくなりましたし、対象業種のお客様にとっては、シリーズとして複数の導入事例を閲覧いただけ、また展示会などでも自社の業種がどの導入事例を手に取るべきかがひと目でわかるようになりました。
なお、導入事例制作のためには、導入いただいたお客様への取材が必要ですが、ブイキューブでは導入事例ページ(Web)、導入事例カタログ(紙)、さらにタイアップ広告でインタビューコンテンツの配信と、一度の取材で最大3フォーマットへ展開。
- タイアップ記事広告
街を守る消防の最前線が“映像共有”でスマート化 「無線だけでは伝わりにくい情報を瞬時に共有できる」 - ITmedia NEWS - お客様 導入事例 Webページ
さいたま市消防局 様 緊急対策ソリューション 導入事例 - お客様導入事例PDF(紙のパンフレットもご用意)
さいたま市消防局 様 緊急対策ソリューション 導入事例パンフレット(
PDF)
導入事例ページを閲覧された方がインタビューコンテンツを読んで理解を深めていただけたり、タイアップ広告も掲載メディアの切り口で事例を紹介してもらえるので、様々な訴求切り口が生まれることでアプローチできる層が広がるなど、より効果的な導入事例活用を進めていきました。
そして計画的に様々な業種、従業員規模別の導入事例制作を進めていき、本格的な取り組み開始をした2016年5月から2020年までで約130本以上の導入事例を制作してきました。
導入事例の刷新で営業活動は効率化。同業種の案件が増えていった
導入事例を刷新したことでの変化としては、まず営業部門が積極的に導入事例を活用し商談するようになりました。
導入事例は、コンテンツ自体がオーディエンスターゲティングしてくれるため、同じ業種、同じ課題を抱える人にアプローチがしやすいことが特徴です。そして同業他社の課題解決の導入事例を通じて、「自社も同じことをやりたい」という問い合わせに繋がりやすく、コンペになりにくいため、実際に導入事例と同業種の案件は着実に増えていきました。
また、営業担当は商談の際に同じような業種、悩みを抱えていた企業の導入事例を持っていき、「実際にこうやって使っているんですよ」と製品紹介を行うことで、お客様に課題解決のソリューションをイメージしてもらいやすく、契約に繋がりやすくなったのでした。
そしてWebサイトでは、お客様の情報と引き換えに導入事例をダウンロードいただけるよう、フォームを設置。2020年10月時点ではコンバージョンポイントの6割が導入事例ダウンロードとなるなど、非常に効果的なコンテンツであることがお分かりいただけるでしょう。
成果に繋がる「導入事例」を制作するための5つのポイント
では、具体的にどういったポイントに気をつけて導入事例を制作すべきか、成果に繋がる導入事例制作のための5つのポイントをご紹介いたします。
【1】 導入事例の目的を明確にすること
闇雲に導入事例を制作したとしても、案件や受注は増えていきません。マーケ担当者はどういった導入事例をつくるべきか、どういった解決策や利用シーンにフォーカスを当てるべきかを営業部門と認識合わせを行うことが重要です。
そして下記のような事前ヒアリングシートを社内関係者に展開。ヒアリングした情報をもとに導入事例ごとの目的を定めることで、目的達成のために「メインビジュアルはここで撮影しよう」「テキストではこういった訴求をしよう」といった成果に繋がる見せ方を企画することができるのです。
導入事例の企画制作にあたり要件を検討するため、社内関係者と確認したりすり合わせたりするための確認事項をまとめたGoogle ドキュメントのリンクを貼っておきます。確認項目だけではなく、記入例も記載しておきます。
【2】 業種やシーンがわかる写真を使うこと
上述のビフォーアフターでもご紹介いたしましたが、1ページ目でどういった企業の導入事例で、どういったシーンで導入されているのかをひと目で伝え、導入事例を手にした担当者がイメージしやすくすることが大切です。
そのため、1ページ目では利用シーンの写真や、お客様の業種がひと目でわかる写真を使いましょう。
やりがちなのは、お客様の企業ロゴの前での集合写真でしょう。しかし、それではどういった業種で、どういったシーンの導入事例かが伝わりにくいため、あくまでも最後の手段として考えるべきです。
また、シーンがわかりづらい場合は撮影にこだわらずに、お客様から画像素材を提供いただいたり、ストックフォトの素材を使い、少しでも利用シーンがイメージしやすいよう工夫することも大切です。
そして、導入事例は手にとってもらわなければ意味がありませんから、目を惹く写真となるよう、映える写真を撮影するよう心がけることも忘れてはいけません。
【3】 PDFだけでなく、印刷物として用意すること
PDF版の導入事例のみを制作しているケースも多く見受けられますが、導入事例は印刷物として用意することは非常に重要です。
印刷物であることの最大の利点は、回覧されるということです。実際にGAXが導入事例制作をご支援しているパナソニック・ソリューションテクノロジー株式会社様では、取材先のお客様から「導入事例を100部ください」と言われ、お客様のつながりのある同業他社に配布してくださいました。
同業他社は、まわりの企業が導入しているということを知ると「自社も導入しなくては」と思うようになりますから、導入事例は導入決定の後押しになっていきます。そうした機会を逃さないためにも、導入事例は印刷物として用意すべきなのです。
また印刷物の導入事例は、お客様企業の担当者との関係づくりの取っ掛かりとして、非常に役立ちます。ブイキューブでは導入事例を新規開拓として送付することもあるのですが、後日、「先日お送りしたカタログはご覧いただけましたか」とコミュニケーションをとっていくのです。
BtoB商材は、業種によって導入検討から契約までに数年かかることも珍しくないため、関係構築のためのツールとしても、印刷された導入事例は効果的でしょう。
アバー・インフォメーション株式会社様の導入事例PDFはこちらからダウンロードできます。
こちらの事例カタログの郵送申し込みフォームを準備します。フォームの公開までお待ちください。
【4】お客様が次のライフサイクルステージに進めるようなトリガーを用意すること
Webで導入事例コンテンツのDL施策を行っている企業は多いかと思います。その際に、フォームの項目も注意しなければいけません。情報収集フェーズの段階で、企業名や役職など複数の項目がある場合はフォームでの離脱が予想されるため、基本的に導入事例ダウンロードでのフォーム項目は、メールアドレスのみにすべきです。
上記のさいたま市消防局 様 緊急対策ソリューション 導入事例ページをご覧いただけます。
そして情報収集から比較検討、評価選定へとお客様が次のライフサイクルステージに進めるようなトリガーを用意すること。ブイキューブでは導入事例DLいただいた方に、製品別・業種別の関連情報、またお役立ちコンテンツや他のe-bookのご紹介、セミナーのご案内などをメールで1日1通自動配信を行っています。
さらに導入事例DLページのサンキューページには、セミナー告知や、郵送の申し込みフォームなど別のCTAも設置しています。
さらなる情報収集を希望するお客様がアクションできるよう設計することで、お客様は次のライフサイクルステージに進むことができ、よりリッチなお客様情報を提供いただける機会をつくることができるようになるのです。
【5】継続的に制作するための制作体制、フローを整備すること
導入事例制作には、ライター、編集者、カメラマンといったリソースの確保が必要です。ブイキューブでは、導入事例専任の編集者をアサインし、ライター、カメラマンは外部のフリーランスの方に依頼する形で制作体制を整え、2020年は年間40本の導入事例を制作しました。
継続的に導入事例を制作していくためには、このように導入事例のための制作体制を整えなくてはなりません。また外部のライターやカメラマンに依頼する場合は、安定的にクオリティが担保された導入事例となるよう制作フローを整えることも大切です。
たとえばブイキューブでは、パワーポイントで入稿フォーマットを用意。ライターへはパワポに入力して納品してもらうフローにすることで、大きな構成のやり直しなどが起きないようにしました。
- GAXのお客様導入事例フォーマット(PPTXファイル)をダウンロードできます。ご活用ください。
- アバー・インフォメーション様の導入事例原稿のフォーマット(PPTXファイル)をダウンロードできます。ご活用ください。
また、取材先となるお客様とのアポ取りも重要であると考えています。私はアポ取りのためのお打ち合わせをセッティングし、レターを読み上げつつ、これまでどういった導入事例を制作してきたのか、またどういった導入事例をつくりたいのかをご説明。
- 導入事例取材へのご協力のお願い(dotxファイル)をダウンロードできます。
- Google ドキュメントでもアクセスできます。コピーしてご活用ください。
そこまですることで、お客様の中でもどういった写真が必要であるか、どういったコンテンツであるべきかの理解が深まり、また会社のアピールにも繋がるということで、とても良い写真を撮らせていただけたりします。
そして、対面取材でもオンライン取材でも、基本的にWeb会議で取材を行い、どういったトーンでお話されていたのか、どういった表情をされているのかなども記録しています。そうすることで、実際の導入事例制作時に適切なニュアンスで表現できるようになり、より良い導入事例を目指していけるのです。
おわりに:コンテンツ企画に迷ったら、まずつくるべきは導入事例である
これまで何度もお伝えしてきましたが、お客様は購買プロセスの57%を自ら進むと言われています。そのため、お客様自ら情報収集を行い、学習を進めていくためには、コンテンツが何よりも重要です。
そのためBtoBマーケターは、お客様に学んで頂くためのコンテンツをつくることが求められますが、コンテンツ制作には時間と労力が非常にかかり、さらにコンテンツ制作のナレッジやノウハウがない場合、ゼロからSEOキーワードの選定や設計、またコンテンツ企画を進めることはとても難しいでしょう。
そこで、どういったコンテンツをつくるべきか悩んだら、まずつくるべきは今回ご紹介した導入事例です。導入事例はお客様が語ってくださるコンテンツでありながら、対象となる業界の担当者や同様の課題をお持ちの方にとって役に立つ、お客様の課題に対する解決策を提示できるコンテンツです。
読んでいただいた方が「自社も同じようなことをやりたい」と思えるような導入事例を目指し、ぜひ商談に繋がる導入事例制作を進めていってください。
GAXでは、お客様導入事例の制作を承っています。導入事例の内製化を進めたい、制作体制を構築したい、導入事例を制作して欲しいといったご要望に対応しています。ご相談がありましたらお問い合わせフォームからご連絡ください。
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謝辞
ブイキューブで取り組んでいるお客様導入事例の制作メソッドは、2006年にカスタマワイズの村中さんのセミナー、無料のガイドブックと、実際に導入事例制作を依頼して習得した内容を自分なりにアレンジして実践しています。村中さんとの出会いや一緒に取り組んだことは、改めて記事を書きたいと思います。
佐藤 岳
2000年より事業会社とサービス提供会社で営業、マーケティング担当者としBtoBマーケティングに従事し実績多数。2015年11⽉株式会社ブイキューブ⼊社。2016年4⽉〜2020年12月までマーケティング本部長として商談案件の創出を担当。コンテンツの企画制作、広告運⽤、アナリティクスを完全内製化し商談の創出、受注に貢献。得られた知⾒やノウハウ・ドゥハウを提供するBtoBマーケティング総合⽀援サービスGAX(ガックス)を2020年1⽉より提供開始。