2021.06.24
「The Model」は来訪者を増やさなければ機能しない。月間アクセス数を1年間で18倍にした話
- BtoBマーケティング
こんにちは、BtoBマーケティング支援サービス『GAX』責任者を務めている佐藤岳です。
これまで私がブイキューブでBtoBマーケティングを推し進め、2020年にはマーケティング活動からの新規受注を2016年比で9倍成長を実現するまでに至った過程を、事例を交えながら様々な切り口でご紹介してきました。
これまでの活動により、ブイキューブのマーケ施策に反応していただければ、案件化して受注する仕組み The Modelの体制が整いました。
The Modelの体制は整ったものの、一方ではThe Modelの一番はじめのステップの「来訪者数」を増やすことに課題がありました。 折角のThe Modelも、来訪者を増やすことができなければ機能しません。当社へ興味をもっていただき、製品やサービスの導入を検討していただくための手段については手探りの状態からスタートでした。
そこで2017年1月からは、メディア企業とのタイアップによる記事広告の連載により「お客様に見つけていただく仕組みづくり」をはじめました。
今回は、訪問数を増やすためのチャネルづくりのひとつとして、キーワード検索で情報を探している人に見つけていただくために、ブイキューブであった実際の課題や取り組んだこと、また再現性のあるポイントをご紹介します。
ブイキューブで実際にあった「来訪者数」が増えない問題
MA導入プロジェクトでは、「テレビ会議」の導入を検討されるお客様のカスタマージャーニーに即したコンテンツを制作し、ブイキューブのコーポレイトサイトとは別に開設したビジネスブログ「INSIGHTS SHARE」に公開しました。
しかし、これらのコンテンツは、お客様の課題の解決策に「テレビ会議」を選択していただいた場合には機能しますが、そのような選択をされなかったら見向きもしてもらえません。また、「テレビ会議」以外のキーワードで情報を探している人にも見つけてもらえません。
実際、当時のビジネスブログへのセッション数は、コーポレートサイトのセッション数と比べて大幅に少ない状況でした。
当時のビジネスブログ、INSIGHTS SHAREのコンセプトです。
テレワークで変わる仕事と新しい働き方を提案するオウンドメディアです。リモートワークや在宅勤務、サテライトオフィスなど新しい働き方を紹介すると共に、テレビ会議やWeb会議などのソリューションについても紹介します。テレワークで働き方改革を始めましょう。
このようなコンセプトを掲げていながら、関連する情報を発信できていないため、当時の月間セッション数は、コーポレートサイトの1/20でした。さらに当時のブイキューブには、オウンドメディアのコンテンツを拡充するためのアプローチについての知識がありませんでした。
そこで、まずは「お客様に見つけていただく」という視点でコンテンツの拡充を進めていきました。
お客様に見つけていただくのためのコンテンツ拡充について実際に取り組んだこと
お客様に見つけていただくのためのコンテンツ拡充は、実際に以下の内容を取り組みました。
- あらためてペルソナを作成し、ペルソナの情報ニーズを考える
- 情報ニーズに即した発信ができているのか振り返る
- 振り返りをもとにコンテンツを作成し公開
- 各種KPIを確認しながら運用を行う
この取り組みを通じて、2019年1月と2019年12月では月間のセッション数が18倍まで大きく増やすことができました。具体的に取り組んだ内容をご紹介します。
インサイドセールスとマーケであらためてペルソナを作成
2018年〜2019年当時は、働き方改革の必要性が叫ばれ、2019年4月には働き方改革関連法案が施行されました。当時、ブイキューブが注力して提供していた製品サービスは、Web会議やテレビ会議といった領域です。これらの製品・サービスは、インターネットに接続できるPCやスマートフォン、タブレットなどのデバイスでWeb会議ができれば、場所に縛られなずに仕事ができる特徴があります。
そのような世の中の変化に対応し、当社へお問い合わせいただくお客様のニーズも変化していたことから、インサイドセールスとマーケティングのメンバーで、あらためてペルソナを作成しました。
実際にペルソナを作ってみると、ペルソナは、「働き方改革」ってどのように進めたら良いのだろう、長時間労働の抑制にはどのように取り組んだら良いのだろう、という課題を持っていることが明確になりました。
ペルソナが探している情報の“トピック”を整理する
2019年2月からはコンテンツ内製化を本格的に進めるべく、戦略設計から元HubSpot Japanシニアマーケティングマネージャーで株式会社LEAPT(レプト)でマーケティング支援をされている戸栗さん(@shoheitoguri またはnoteはこちら)にご支援を依頼しました。
The Model の「見込み客を獲得する」ために、「訪問者の最大化」「潜在見込み客数の最大化」「見込み客数の最大化」の3段階で進めていき、会社名/製品名を知らなかった人がブランド認知している状態になることを目指して、どういった情報ニーズがあるのか、どういったキーワードで検索されるのか、ユーザーにとって最高のコンテンツとは何かといったことを考え、企画を進めていきました。
そして現状分析を行い、ペルソナに見つけていただき、自ら学習していくためのコンテンツ拡充を進めていきました。
なおコンテンツは、HubSpotが提唱するSEOの概念「トピック・クラスター・モデル」をもとに企画を進めていきました。Googleの検索アルゴリズムは、特定のトピックに対して最高のユーザー体験を実現できそうかどうかを評価していると言われており、トピック・クラスター・モデルはインデックスされることを目指す上でのコンテンツの考え方です。
詳しくは、“検索体験”の最適化を目指す HubSpotが提唱する新SEO手法「トピッククラスターモデル」とは?:MarkeZine(マーケジン)をご覧ください。
たとえばブイキューブであれば「働き方改革」というトピックを幹(ピラー)とするコンテンツに対し、幹に関連するコンテンツの房(クラスター)コンテンツとして「テレワーク」「デメリット」「在宅勤務」といった切り口のコンテンツをつくり、相互リンクを設置していきます。こうしたトピック・クラスター・モデルに基づくコンテンツ企画を複数のトピックで進めていきました。
一度に約100のアイデアを出すことができれば、約1年分のコンテンツの方向性を決めることができます。トピッククラスターモデルの考えに基づき、集中的にコンテンツ案を企画することで、ランダムに記事を作成していくよりも効率的にコンテンツ制作を継続しやすいというメリットがあります。
戸栗さんに許可をいただいて、トピッククラスターモデルのサンプル (Google スプレッドシート)を貼っておきます。
情報を探しているペルソナに最高の結果を提供するコンテンツを制作する
次に戸栗さんから、情報を探しているペルソナに、ブログ記事コンテンツでしっかりと期待に応えることの重要性を教わりました。ブログ記事にアクセスしたペルソナの情報ニーズにしっかり応えているのか、読んだ後にどのようなアクションを促すのか、しっかりと考えなければブログ記事への流入は増えるどころか、成果につながらず失敗するとのことでした。
このため、ペルソナのニーズに即した情報をしっかりと提供すべく、記事コンテンツの構成案の作成方法を教わりました。
構成案には、ペルソナが検索するキーワードと、そのニーズに即してどのような情報を提供すべきかということを明確にします。その上で、しっかりと期待に応えるコンテンツを作ることを目指すという考え方です。
戸栗さんに許可をいただいて、コンテンツ構成作成のサンプル (Google ドキュメント)を貼っておきます。
コンテンツの構成を社内のメンバーで作成することで、記事コンテンツの品質を一定以上に保ちやすくなり、公開後の効果を分析しやすくもなります。この記事コンテンツの制作方法をマーケのメンバーへレクチャーしていただきながら、自分たちが対策するキーワードについて、記事構成案を作成し執筆を開始しました。制作する記事本数の量が多いため、一部を外部のフリーランサーの方へ執筆を依頼しました。
戸栗さんに許可をいただいて、部分内製で執筆を外注する流れ(Google スライド)のリンクを貼っておきます。
ここまで教えていただいた、トピックの作成方法や、構成の作成方法、外部ライターの確保の方法といったコンテンツ内製の取り組みをノウハウを資料として残すことで、後に社内マーケのメンバーが異動しても安定的にコンテンツ作成業務が継続できるようにアドバイスしていただきました。
この当時、戸栗さんはフィリピンのセブ島に暮らしながら、ブイキューブをはじめ、日本企業のBtoBマーケティングを支援されていました。詳しくは、セブ島に暮らし、日本企業のB2Bマーケティングを支援する戸栗頌平さん。海外リモートワークに最も必要なのは「プロ意識」|テレワークナビをご覧ください。
月間セッション数は18倍、流入経路の88%がオーガニック検索に。
戸栗さんにレクチャーしていただきながら、戸栗さんとマーケのメンバーでコンテンツの制作を進め、2019年4月中旬から週に3本のコンテンツを公開をスタート。2019年7月より専任メンバーとして新卒社員1名をアサインをしました。
そして戸栗さんの指導のもとコンテンツ公開を進めつつ、わずか3ヶ月で新卒社員ひとりで自走できる状態へ。外部のフリーランスライター5名のディレクションを行いつつ、2019年下期では、目標としていた月間セッション数、オーガニック流入比率を大幅に達成。再現性のある的確なアドバイスを外部に求めたことが、アクセス増だけでなく、新人の早期育成にも寄与することとなりました。新卒の川本くんの出張手記 「アメリカ、行っていいよ。」新卒の僕がサンフランシスコで一週間リモートワークしてみた結果。 をご覧ください。
さらに2019年1月と12月で比較すると、月間セッション数は18倍へと成長しつつ、内製コンテンツの取り組み開始からオーガニック流入は右肩上がりで増えていき、2019年12月末時点では、トラフィックの9割がオーガニック流入になるなど、潜在見込み客を増やすという目的を見事に実現できる結果となったのです。
2019年にトラフィックが多かった記事の一部をご紹介します。
- 5分で分かる!働き方改革のメリットとデメリットをわかりやすく解説|テレワークナビ
- 在宅勤務の社員のさぼりを防ぐ!企業がとるべき対策と事例を徹底解説|テレワークナビ
- もうすぐ「テレワークが当たり前」の時代がくる。森本登志男さんに聞く、テレワークの意義と、これからの働き方の話|テレワークナビ
- 働きやすい職場とは?実践のポイントと企業成功事例6選|テレワークナビ
- 地方創生に成功した10の好事例から学ぶ!生産性向上の道とは?|テレワークナビ
まとめ:ペルソナの「モヤモヤした課題」に応える学習コンテンツを公開することで来訪者を増やすことができる
ご覧いただいたように、ペルソナの情報ニーズに即したコンテンツをトピック・クラスターという考え方で制作し継続的に公開していくことで、情報を探しているユーザーに私たちのブログ記事コンテンツを見つけていただきやすくなります。
この時に大切なことは、「自分たちが言いたいこと」を発信するのではなく、「ペルソナが知りたいこと」という視点で情報を発信することです。そのためにも、ペルソナが潜在的に持っているであろう悩みや課題を言語化し、ペルソナが自ら学習する上で最高のコンテンツを企画、制作、公開していくことで、モヤモヤした状態で情報収集しているペルソナに私たちを見つけていただけるようになります。
そのようにしてペルソナと出会い、記事を読んだペルソナへオススメの次のコンテンツを提示することで、ペルソナの学習をサポートできます。繰り返しますが、Martinによると、BtoBバイヤーは、売り込まれたいのはなく専門家に助けて欲しいのです。私たちがペルソナの課題解決の専門家として、ペルソナの学習を支援していくことが、その後のペルソナとの関係構築には不可欠です。
このような記事コンテンツを作成していく体制を構築したり運用することはとても骨が折れます。GAXでは、戸栗さんやMOLTSなどの専門家と連携してコンテンツ制作やコンテンツ制作体制の構築を支援しています。
お客様に見つけていただくための「きっかけ」のつくり方という切り口で、媒体社とのタイアップ記事広告による情報発信についての記事 BtoBバイヤーは自ら購買プロセスを進んでいくというのは本当なのか?お客様のリアル閲覧履歴を公開 もご覧ください。
ペルソナに役立つコンテンツという視点では、お客様による導入事例も欠かせません。営業の現場では、お客様へ製品やサービスを紹介する際に「製品やサービスについてはよく理解できた。で、実績は?」と聞かれることが少なくありません。お客様担当者にとっても、社内で説得するにあたって「なぜこの製品・サービスを推すのか」が必要なのです。
この時に、お客様取材に基づく導入事例をさっと提示でき、その事例が提案しているお客様と同じ課題を解決した内容であれば、その後の商談がスムーズに進むことは容易に想像できます。
ブイキューブでは、2016年5月に導入事例をリニューアルし2020年までで約130本以上の導入事例を内製化しています。次回の記事では、お客様の導入事例の作り方や活用方法についてご紹介します。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
佐藤 岳
2000年より事業会社とサービス提供会社で営業、マーケティング担当者としBtoBマーケティングに従事し実績多数。2015年11⽉株式会社ブイキューブ⼊社。2016年4⽉〜2020年12月までマーケティング本部長として商談案件の創出を担当。コンテンツの企画制作、広告運⽤、アナリティクスを完全内製化し商談の創出、受注に貢献。得られた知⾒やノウハウ・ドゥハウを提供するBtoBマーケティング総合⽀援サービスGAX(ガックス)を2020年1⽉より提供開始。