2021.01.05

BtoBマーケで成果が出ない理由「組織でお客様を理解していないから」

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BtoBマーケで成果が出ない理由「組織でお客様を理解していないから」

「BtoB マーケティングに取り組んでも、成果が出ないのはなぜ?」私が、ブイキューブのBtoBマーケティングの取り組みをご紹介するイベントで講演させていただいた後に、最も多くいただくご質問がこちらです。

効果を実感できないBtoBマーケティング

うちの会社は、法人向け(BtoB)ビジネスです。これまで、マーケティング活動といえば、展示会出展やDM、テレアポでした。お客様の購買行動が変化し、デジタル(オンライン)で情報収集されているという話をきき、デジタルでの情報収集しているお客様からの問い合わせを獲得するには、マーケティングオートネーション(MA)の導入が必要だ、と提案され、関連するコンテンツを作っても結局、マーケティング活動から受注に繋がったという成果を実感できていません。

後日、より詳しくお話をきかせていただくと、ご質問されている方は、本当に真剣にかつ誠実に、施策に取り組まれており、そのご苦労に見合った成果が出ていないことに、私自身心を痛めます。もちろん、解決したい課題、取り組んでいる活動に課題があるとは思いません。より詳しくお話を伺っていると、このようなご質問をされる方に共通する課題が見えてきます。それは、お客様を理解せずに、マーケティング活動や各種施策に注力している点です。

自社の製品・サービスを購買されるお客様は、どんな人(会社)なのか、どのようなきっかけや背景でそれらの導入を検討し、どんな情報を収集し、だれが、どのように比較検討を行い、購買の意思決定をしているのか、実は、関係する組織全体で明確になっていない、または、意識統一できていない、ということに気が付かされます。

もちろん、全ての方がそうではありません。一部の方は、かなり詳しく把握されていたり、理解されていますが、組織全体で、その考え方が共有・理解されていないために、結果的に組織として成果を生み出せないのだと思います。

実は、実際のお客様と違うなよなぁ...ペルソナ、カスタマージャーニーが...

私は、ご相談された方に次にように質問します。御社のお客様はどんなお客様ですか?いつ、どんな時に御社の製品・サービスを購買されるのですか?なぜ、御社の製品が選ばれるのですか?ご存知ですか?と。皆さん、かなり明確に回答していただけます。

次に、その結論は、御社で製品・サービスの販売や提供に携わる方々が同じ考えですか?と伺います。すると「きっと、みんな分かっているはずです。」と、お答えになります。

お客様に製品やサービスを実際に提供されている方々に直接お話を伺うと、マーケティングが作った、ペルソナ、カスタマージャーニーやそれに付随するコンテンツを作って見込客を創出する活動をしていることは知っているよ。だけど、実際のペルソナやカスタマージャーニーは、ちょっと違うんだよな....。実はさぁ〜...、とかなり詳しく教えていただくことはが少なくありません。

これらのことから、一所懸命に作成したペルソナやカスタマージャーニーは、実際のお客様のニーズにフィットした情報をご提供できてないため成果が生まれないのだと思います。

マーケティングは、何を目指すべきか?

経営の父と呼ばれる、ピーター・ドラッカー氏をご存知でしょうか?2「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら(略称は「もしドラ」)」でお馴染みの方も多いと思います。ドラッカー氏は、マーケティングの目指すべきことについて次のように述べています。

マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、自ずから売れるようにすることである


マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則 ピーター・F・ドラッカー 上田 惇生 (翻訳) P16より引用 
 

このお話をさせていただくと「お客様を理解することの重要性は今さら言わずもがなですよ...」と、ご質問者様はおっしゃいます。ただ、課題は、お客様から受注し製品・サービスを提供される方々とマーケティングに携わる方が、同じようにお客様を理解していないことが課題の本質だと思います。

お客様はどんな人なのか、なぜ、製品・サービスを購買されるのか、どんな時に購買の検討をスタートし、どんな情報ニーズがあるのか、その際に、どんな情報を提供したら、”製品・サービスが自ずから売れるように”お客様に購買していただけるのか?この意識あわせ、考え方の統一が不可欠だと思います。

お客様の購買行動を理解する、自分の購買行動を振り返る

”製品・サービスが自ずから売れるように”お客様に購買していただけるには、お客様を理解することから始まります。お客様を理解するポイントに人物像と購買行動があります。私がコンサルティングさせていただく際に、クライアントの経営層と販売に関わる皆さまを対対象にワークショップを開催します。その目的は「購買行動の理解」です。

ワークショップに参加されている方の中から3名の方に立候補していただき、以下の質問をします。

  • 最近、買ったものを教えてください。
  • なぜ、購入しようと思ったのですか?きっかけは?
  • 購入するまでに、どこで、どんな情報を収集しましたか?誰かに聞きましたか?
  • 参考になった情報は、どんな情報ですか?
  • 最終的に、どこで買いましたか?
  • 購入してみて、使ってみて、どうでしたか?感想は?

お話を伺いながら、これらの回答を表にまとめて行きながら議論します。このワークショップは、いろんなお客様で行っていますが、とても盛り上がります。

上司や部下、同僚が購入したものが自分と同じだったり意外だったり、社内での融和のきっかけになります。このワークショップでのまとめは、何かの課題やきっっかけから製品・サービスの購買を検討しはじめる。ネットやその分野に詳しい人に話をきき、製品やサービスを選定し、なんらかのレビューを見たり、実際の利用者に話を聞いてみる。その上で、ご自身で比較検討を行い、購買する。最終的に「購入した製品・サービスに、満足されている」方が多いです。少なからず満足されていないケースもありますが、それは、ご自身の判断ミスだったと仰います。要は、何かのきっかけから購買行動がスタートしており、ほぼ、ネットで情報収集しています。

その購買行動を、Google は、2011年にZero Moment of Truth(ZMOT:ジーモット)とう概念で提唱されました。ZMOTの段階で得た情報が購買の決め手になっています。

お客様の購買行動を理解する、自分の購買行動を振り返る画像はWinning the Zero Moment of Truth eBook (2011)より転載

購買プロセスの6割を進む、自ら学ぶ買い手たちに見つけてもらうために

皆さん自身の購買行動がまさにZMOTなのです。実は、法人向けビジネスでも同じことが言われています。テクノロジーが発達し、容易に情報を検索できる様になったことで、BtoBバイヤーも、課題に気がつき、解決策を探し、それを比較検討するための情報をインターネットで調べられる様になりました。

2012年に発表された、2012 BtoB Buyer Behavior Survey、BtoB バイヤーの行動調査レポートによると、課題解決のための情報探索を始めた際に、その解決策を提供してくれる会社の選択で最も影響を与えたメディアは、Web検索とそれらの会社のWebサイトであるという結果です。

購買プロセスの6割を進む、自ら学ぶ買い手たちに見つけてもらうためにグラフはThe 2012 BtoB Buyers Behavior Survey : News Challenges, New Complexity – Demand Gen Report より筆者が作成

Corporate Executive Board (CEB)が、1,400のBtoBバイヤーに調査した結果によると、営業パーソンにコンタクトする前に、課題の発生、解決策の探索、評価選定、といった購買プロセスの57%を完了している”と述べられています*。さらに、2013年に出版された、THE INVISIBLE SALES - Tom Martin では、BtoBバイヤーのことを Self-Educatiing Buyers (自ら学ぶ買い手たち)と名付けています。バイヤーは、自ら学習するので、学習するための素材=教材を求めている。バイヤーは、営業されることを望んでおらず、助けてもらうことを望んでいる。人々はエキスパート(専門家)を信頼している。売り手がすべきことは、買い手から情報を得る前に買い手が必要としている情報を提供するべきだと。

*The End of Solution Sales より引用

この買い手のプロセスには、製品企画、マーケティング、営業、プレセールス、ポストセールス、カスタマーサービス、カスタマーサポート、といった部門の関係者が関わります。1社のお客様に対して、実に様々な部門の様々な関係者が関わります。関係者は変わりますが、お客様からしたら御社は御社です。そこで、お客様の課題を自社の製品やサービスの利用を通じて解決するためにご支援していく一連の活動をスムーズに行うことがとても重要です。

松下幸之助さんは「商売心得帖 (PHP文庫)」で以下の様に述べています。

製造には、新しい発見や発明が考えられます。しかし販売には、 とりわけ妙案の生まれることはまずないといっていいでしょう。
(しかしお客さんというのは) 自分に満足を与えてくれているという感じが好みの店を決めているのです。
販売というものを成功させるためには、いかにすればお得意様に 喜んでいただけ、どういう接し方をすれはご満足願えるか、 ということを考えることが何よりも大切だと思います。

お客様に喜んでいただくために、関係者でペルソナ、カスタマージャーニーを作成しましょう

これまでの事実を踏まえると、お客様に製品やサービスを購入していただくためには、お客様の購買行動にそった情報提供が不可欠です。実は日頃、お客様と接点をもっている方々がお客様やお客様から要求される情報について詳しいです。それは、営業パーソンや提案活動に関わる技術者、契約後に製品やサービスをご提供される方、お客様からのお問い合わせを受け付けるカスタマーサポート、カスタマーサービスやカスタマーサクセスのみなさまです。

私がご提案したいことは、自社の製品・サービスをお客様に販売・提供されるのプロセスに携わる皆様と一緒にペルソナ、カスタマージャーニーを作成することをです。もちろん、マーケティング部門以外の方に、いきなりペルソナやカスタマージャーニーを作りましょう、と申し上げても面食らってしまいます。丁寧に、昨今の購買行動の変化とご自身の購買行動を一緒に振り返りつつ、課題解決にむけて情報収集されているお客様が自ら学習できるコンテンツを一緒に作りましょうと働きかけます。

そのような過程を経て改めてカスタマー(バイヤー)ジャーニーを作ってみると、従来のそれと驚くほど異なったものが作成されてきます。また、それを元に、コミュニケーションやタッチポイントを設計し、お客様が自らジャーニーを進んでいただくための流れを設定し実装していくと、驚くほどスムーズに見込客を創出でき、案件(商談)が創出され、受注に繋がります。また、継続してご利用いただけます。GAX(ガックス)では。このような課題解決をご支援をさせていただいています。

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佐藤 岳

2000年より事業会社とサービス提供会社で営業、マーケティング担当者としBtoBマーケティングに従事し実績多数。2015年11⽉株式会社ブイキューブ⼊社。2016年4⽉〜2020年12月までマーケティング本部長として商談案件の創出を担当。コンテンツの企画制作、広告運⽤、アナリティクスを完全内製化し商談の創出、受注に貢献。得られた知⾒やノウハウ・ドゥハウを提供するBtoBマーケティング総合⽀援サービスGAX(ガックス)を2020年1⽉より提供開始。