2021.07.01

売上は前年比で4.5倍を実現。展示会への出展を成功させる4つのポイント

  • BtoBマーケティング
売上は前年比で4.5倍を実現。展示会への出展を成功させる4つのポイント

BtoBマーケティング支援サービス『GAX』責任者を務めている佐藤岳です。

これまで私がブイキューブでBtoBマーケティングを推し進め、2020年にはマーケティング活動からの新規受注を2016年比で9倍成長を実現するまでに至った過程を、事例を交えながら様々な切り口でご紹介してきました。

BtoBマーケティングで見込客獲得を目的に取り組むべき施策は、当然ながらデジタル施策だけではありません。オフラインでの施策、具体的には展示会やセミナーも、BtoBマーケティングにおける重要な施策のひとつです。

しかし、オフラインの施策であるがゆえに企画や準備、また当日の運営などに追われてしまい、PDCAを回していくための振り返りや改善ができていないケースも多く見受けられます。

そこで今回はオフライン施策の中でも展示会にフォーカスし、実際にブイキューブでもあった展示会出展の課題から改善のための取り組み、また展示会への出展を成功させるための4つのポイントをご紹介いたします。

2千件のうち受注は11件のみ。やりっぱなしで終わっていた展示会への出展をどのように改善していったのか

まず、あらためて展示会にはどういった方々が来場されるかと考えてみましょう。このnoteをご覧になっている、あなたご自身は展示会へ行かれたことがありますか?その時のことを思い出してみてください。多くの方は、特定のテーマやトピックについて情報収集しようという目的で展示会場へ向かっていると思います。

また、関係のある会社からメールマガジンやSNSでの展示会への出展内容の「お知らせ」を見て、会場へ行ってみようという方もいると思います。この場合でも、その会社のブースだけを訪問するわけではなく、時間があれば、できるだけ多くのブースを見ようと考えると思います。

展示会への出展は、皆さまのような特定のテーマやトピックについて情報を収集しようとする人々と出会えるため、効率的に見込み客を獲得できる特徴があります。

ブイキューブも見込み客の獲得を目的に出展をしていました。しかし、私が入社した2015年は、展示会で2,000件以上のリード獲得ができても、そこから受注に繋がったのはたった11件という状況で、費用対効果の高い施策ではありませんでした。

そこには3つの課題がありました。まず1つは展示ブースのコミュニケーション設計が不十分であったということです。展示会に来場されているお客様へ、ブイキューブが提案できる「価値」をしっかりと伝え、興味関心を持っていただき、お客様からの情報を提供いただく、という観点で企画されていませんでした。

とりあえず量を獲得するというやり方で進めており、ブイキューブの製品に興味あるなし関わらず、イベント・コンパニオンでお客様を呼び込み、ノベルティと引き換えに名刺およびアンケート獲得を行うという方法でした。

そして2つめの課題は、迅速なフォローアップができていませんでした。展示会の会期終了後、獲得した名刺やアンケートの電子化に2ヶ月もの期間を要しておりました。さらには、展示会で獲得した見込み客リストに対して誰が、どのお客様をフォローするのかが決まっていませんでした。

関連記事:なぜ営業はマーケのリードを後回しにするのか。組織横断での「顧客理解」が大切な理由

それでもフォローしたお客様にしたら、「展示会から2ヶ月後に電話をかけられても……」となってしまいますから、当然ながら案件化率は低くなります。

最後に3つめの課題は、やりっぱなしの施策になっていたということです。展示会の出展時に目標KPIを設定していたものの、数値をもとにした振り返りをしておらず、展示会に出展して終わりという状況でした。

展示ブースの演出プランに対する来場者の方の反応はどうであったかということも、もちろん振り返りができていませんから、改善のないまま別の展示会にまた出展するという繰り返しで、PDCAを回せていませんでした

そういった状況ですから、営業もマーケが展示会で獲得したリードに期待しておらず、組織横断で協力体制をとるような展示会マーケティングはできていませんでした。

2014年の展示ブース

こちらは、2014年の展示会の様子です。社名とWeb会議サービスのシェアNo.1を中心とした訴求で、お客様がお持ちの課題に対して、どのように解決できるのかを伝えきれていませんでした。

そこで、2015年に私がブイキューブに入社し、ゼロからマーケティング組織の立て直しを進める中で、展示会出展の改善にも着手。まず行ったのが、「展示会という施策の特性を踏まえた活用法」の解説でした。

展示会という施策は出展する展示会の選定、出展の規模、展示内容の企画や準備に相当の時間がかかります。また、展示会のブース運営担当者や説明員のメンバーは、期間中は他の仕事もできません。さらには出展コストも安くはありませんから、戦略的に取り組まなければ、とても非効率なマーケティング手法となってしまいかねません。

そこで自分たちが出展を検討している展示会にはどういった方が来場されているのか、私たちがお取り引きさせていただきたいお客様は来場されるのか、どんな会社が他に出展しているのか、そうしたことから展示会の目的や目標と来場されるお客様へ私たちが提案できる価値を整理していきました。

また、投資対効果の良し悪しを図れるよう、見込客の獲得件数やSQL数、受注件数などのKPIを設定し、効果測定できる運用体制も整備しました。マーケティング施策の効果測定の把握や分析については別に記事を書きます。

先ほども触れましたが、展示会への来場者の多くは無目的に会場を回遊し、「何か有益な情報はないか」とウィンドウショッピングしている状態ですから、多くの展示ブースが並ぶ中で、自社ブースで提案している価値についてパッと理解してもらえる演出が大切です。

具体的にには来場者の潜在的な課題やニーズを喚起するキャチコピーやブイキューブが提案できる価値を遠くから見てもわかるような設計にしました。

2017年6月28日 東京国際フォーラムで開催されたHuman Capital での展示ブース

上の写真は、2018年6月28日 東京国際フォーラムで開催されたHuman Capitalでの展示ブース。「社員研修の効率化」という「サイン」を大きく掲出することで、来場されている方に「あそこに行けば、研修の効率化について情報を得られる」という認知とブースへの来場促進を図りました。

この展示会では、実際に「研修の効率化」に課題をお持ちの研修担当者の方に多くご来場いただきました。予算の都合で大きなブースを構えられない場合でも、ブースの側面と上部にキャッチコピーを掲出することで、このブースで紹介している内容をパッと伝えられます。

2018年5月31日に開催された震災対策技術展 での出展模様

こちらは、2018年5月31日に開催された震災対策技術展 での出展模様です。

1小間という最小単位での出展ですが、ブースの丈夫に「災害現場の今を共有できていますか?」とコピーを掲出。ブースの間口の左右には、災害時のオペレーションシステムを強化」、「迅速に対応策を検討しなければならない」といったコピーを掲出しています。これらの言葉は、お客様事例取材の際にお客様からお伺いした内容をもとに作成しています。

お客様事例に関する記事:導入事例アップデートで同業種の案件数が増加。お客様からは「100部ください」と言われる導入事例の中身とは?!

建設設計生産性向上展での出展模様

このブースは、主催者から提供される最小のプランで出展しました。工事現場や建設現場、工場などの「現場」を遠隔地から支援するソリューションを、実際の利用シーンの展示パネルの紹介とデモをご紹介するプランで出展しました。

「現場の人材不足をスマートグラスで解消」というコピーと、国土交通省 新技術情報提供システムNETIS(ネティス)に登録されていること、登録番号を掲出しました。まさに、土木・建設業界では人手不足と現場の状況把握に課題があるため、このキャッチコピーは来場者の方にとても響きました。

出展費用の総額は約120万円。3日間で約1,100件のアンケートと名刺を獲得できました。

クラウドコンピューティングExpo2019関西での出展模様

こちらは、2019年1月に開催されたクラウドコンピューティングExpo 関西での展示ブースです。このときは、「2分で簡単!研修動画を作成・配信」「研修の動画素材をわずか2分で作成・配信」「動画研修で営業力アップ」をコンセプトに出展しました。

このブースでは、お客様の来場とデモや説明のお引き合いに対して、説明員の人数が足らない事態になりました。説明を聞くために15分待ちの状況になり、資料だけもらって帰るお客様も多数ありました。

研修の効率化にお困りのお客様がいかに多いのか、関係者一同で実感した出展でした。あまりにも忙しく、昼食はおろかトイレ休憩もままらならない状況だったので、会期中の写真を撮影できませんでした。上の写真は、開催前日のブースの模様です。

また、展示会の会期前には、ブースで説明や接客に対応する関係者で来場者の方へどのようにアプローチし、お客様へどのような質問をするか、どのようなデモを行うのか、メンバーでロープレを実施。お客様からお伺いした内容を、どのように記録するのか、お客様に何を渡すのかといった当日のオペレーションについて関係者で認識を合わせた上で展示会に臨むようにいたしました。

さらにお客様のニーズをしっかりと記録し、迅速にフォローするのために、アンケートの形状、質問項目、対応者を簡潔に記録できるようにしました。

そしてお客様からご回答いただいたアンケートは、3時間おきに展示ブースでiPadやiPhoneで撮影し写真画像に保存。その画像を、名刺やアンケートのデータ化の委託先へ安全に迅速にアンケートデータを共有します。

名刺やアンケートは、画像データを共有した2日後にはリストで納品されてきますので、展示会開催の翌週には、お礼メールの送付、優先度の高いお客様へインサイドセールスや担当営業がフォロー開始できるようにしました。

獲得数は変わらず、売上は前年比で4.5倍に。営業とマーケが協力体制をとって展示会を進めるようになっていった

2017年から展示会への出展方法をリニューアルし、2017年の結果を振り返り改善した2018年では同じ展示会からの案件数に大きな改善が見られました。そして2018年の展示会からの売上は1.3億円と、前年比で4.5倍という結果に。しかも獲得リード数は変わらず、案件数が増え、受注が増えるという結果になったのです。

また、ブイキューブでは、業種や業界に特化したバーティカルな価値提案をベースとした営業活動を行なっているため、営業側から「このイベントに出展してほしい」といった要望が出てくるようにもなりました。

そして、出展ブースの装飾やキャッチコピーはマーケだけで考えるのではなく、業種や業界特有の事情であったり、来場者が抱えている課題を知っている営業と一緒に考えるべきです。

展示会マーケティングから売上創出ができるようになっていき、また組織横断での顧客理解の取り組みもあり、マーケのリードを後回しにしていた営業も、マーケと協力体制をとって展示会マーケティングを進めていくようになっていきました

「展示会マーケティング」を成功させるための4つのポイント

では、具体的にどういったポイントに気をつけて展示会マーケティングを推し進めるべきか、成果に繋がる展示会マーケティングのための4つのポイントをご紹介いたします。

【1】3秒以内に理解できるキャッチコピーを用意すること

上述の通り、無目的で回遊される来場者の方々に、自社のブースがどんなブースであるかを伝えるためには、ブースで掲げるキャッチコピーが非常に大切です。

多くの企業は、ブースで製品名を大々的に打ち出しがちです。しかし、製品を知らない方には何のための製品なのか、何を解決する製品なのかがわかりません。

たとえば、ブイキューブでは「V-CUBE Board」という製品を提供しておりますが、展示会で「V-CUBE Board」という商品名を大体的に見せても、製品を知らない方はブースに興味すら抱かないでしょう。

そこでポイントとなるのが、3秒以内に理解できるキャッチコピーを用意することです。「V-CUBE Board」を打ち出す展示会では、ブースのコピーを「災害時のオペレーションを強化」と改善。また、ショールームのように実際に製品を触って体感できるよう製品を設置しました。

震災対策技術展 での出展模様

そうすることで、無目的で回遊されている方にも「あっ、自社でもこの課題はあるな」と気づいてもらうことができるようになります。そして課題に気づき、ブースに立ち寄っていただいた方には、実際に製品を体験してもらい、どのように自社の抱える課題を解決するのかまでを知ってもらうことができるのです。

こうした製品のデモまでご紹介できるのは、展示会ならでは。闇雲にリードを獲得しようとするのではなく、「お客様にとってなぜ必要なのか」を伝えるためのソリューションをキャッチコピーで提示して、自社の見込み客となりうる方へ訴求し、そしてブースに立ち寄っていただいてデモを体験してもらうという流れをつくることが重要なのです。

【2】 名刺と交換すべきはノベルティではなく小冊子

展示会では名刺交換でのノベルティとして、社名の入った文房具類などを配布されている企業も多いかと思いますが、名刺と交換すべきはノベルティではなく、自社の製品カタログや導入事例、eBookなどの小冊子です。

以下は、建設業界向けのeBookですのサンプルです。このeBookは Microsoft Word で作成しています。eBookの書き方についても、別の記事を書こうと思います。

建設業界の人材不足を解消する解決策eBookの書影建設業界の人材不足解消ソリューションeBook(PDF)をダウンロードできます。

自社ブースのコンセプトに合わせた配布物にすることで、すぐに案件化しなくても、来場者の方に思い出してもらうためのキッカケとなり、お客様からお客様のタイミングで連絡をしてもらうことに繋がります。

特に導入事例は、同じ業種、同じ課題を抱える人にアプローチがしやすいことが特徴です。同業他社の課題解決の導入事例を通じて、「自社も同じことをやりたい」という問い合わせに繋がりやすいのです。

導入事例については、導入事例アップデートで同業種の案件数が増加。お客様からは「100部ください」と言われる導入事例の中身とは?!をぜひ参考にしてみてください。

【3】その場で案件化条件を満たすかチェックすること

一度の展示会で名刺交換の数が1,000件、2,000件となると、展示会終了後にどこから追いかければいいのか、優先順位がわからなくなってしまいます。

そこで、ブイキューブではその場で来場者の方にアンケートを実施し、BANT情報を必ず聞くようにしています。そして、アンケート用紙は受け取った名刺と一緒に管理。そうすることで、案件化条件を満たしているかどうかがその場でわかるため、条件を満たしていれば営業に渡し、満たしていなければインサイドセールスでフォローするといった対応が可能になるのです。

【4】展示会後のフォローアップ体制を事前に整えること

上述の通り、以前までのブイキューブでは展示会後、2ヶ月経ってようやくフォローアップするような、迅速なアプローチができていませんでした。そこで、「誰がいつまでに何をやるのか」を事前に決め、最短で翌日からフォローアップができる体制を事前に整理

フォローアップ開始までに2ヶ月かかっていたものが、現在は2営業日でできるようになり、来場者の記憶に残っているうちにフォローができるフローを実現しました。

特に大切なのは、誰がどなたをフォローするのか、お客様ごとに担当を割り振ることです。そしてお客様のBANT情報に合わせて、参考となるソリューションブログをご紹介したり、関連するセミナーや導入事例をご案内したりと、ナーチャリングのための情報提供を実施すること。

なお、そうしたインサイドセールスの体制づくりについては、「「問い合わせのみ対応する」インサイドセールスを立て直し、4ヶ月後には1億円超の案件を創出した話」もぜひ参考にしてみてください。

おわりに:展示会はマーケにとって、リアルなお客様と出会える大切な機会である

展示会への出展というのは、準備やら何やらでとても労力のかかる施策です。さらにコストも無視できないため、頻繁にやる施策ではない割には失敗できない、投資対効果が求められる施策でもあります。
そのため、いかに1回1回の展示会を戦略的に行い、正しく振り返って改善をしていくかということが重要です。

また、マーケにとってはリアルなお客様となりうる方と出会える貴重な機会ですから、自社の製品に興味を持つ方はどういった方なのか、ブースにいる営業担当がどういった会話をして、どういった反応があるのかなど、お客様の反応を直に得られる貴重な場でもあります。

さらに興味関心を持っていただければ、課題把握から現在の状況など様々なことをヒアリングすることができ、自社が何を提供できるかをじっくり話し合える場所

オンライン施策ではなかなかない、見込み客と密にコミュニケーションをとれる場所ですから、今回お伝えしたようなポイントを大切にし、ぜひ成果最大化に繋がる展示会マーケティングに取り組んでみてください。

なお、GAXでは展示会への出展もご支援しています。参加する展示会の選定から出展企画、またフォローアップまで、総合的にご相談可能ですので、お気軽にご相談ください。

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

謝辞

ブイキューブで取り組んだ展示会へのブース装飾の改善については、船井総合研究所 長島 淳治さんによる連載「間違いだらけの展示会マーケティング | 日経クロステック(xTECH)」の内容を実践させていただきました。この通りにやるだけで成果が出ます。長島さんとは面識ありませんが、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

佐藤 岳

2000年より事業会社とサービス提供会社で営業、マーケティング担当者としBtoBマーケティングに従事し実績多数。2015年11⽉株式会社ブイキューブ⼊社。2016年4⽉〜2020年12月までマーケティング本部長として商談案件の創出を担当。コンテンツの企画制作、広告運⽤、アナリティクスを完全内製化し商談の創出、受注に貢献。得られた知⾒やノウハウ・ドゥハウを提供するBtoBマーケティング総合⽀援サービスGAX(ガックス)を2020年1⽉より提供開始。