2021.04.01

成果を出すために必要なのは「読者が主役である」という発想。ITmedia NEWS 編集長と語るタイアップ記事広告のあり方とは

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成果を出すために必要なのは「読者が主役である」という発想。ITmedia NEWS 編集長と語るタイアップ記事広告のあり方とは

2016年当時、ブイキューブでは検索広告を中心とした運用型広告に注力していましたが、CPAは下げ止まり、次の一手が見いだせない状況にありました。また運用型広告は検討層との接点は持てますが、潜在層へはなかなかアプローチしづらい手法。

そこで、何か別の方法はないだろうかということで取り組んだのが、アイティメディア株式会社が運営するITmedia NEWS、およびITmedia ビジネスオンラインでのタイアップ記事広告でした。

「タイアップ記事広告は、本当に効果があるのだろうか」と懐疑的な方も多くいらっしゃるかもしれません。しかしブイキューブでは2021年1月時点で、合計80本ものタイアップ記事広告を実施するなど、非常に効果的な手法であると考えています。

今回は編集長としてITmedia NEWS、そしてITmedia ビジネスオンラインを統括されている本宮さま、元ブイキューブ担当営業で、現在は ITmedia ビジネスオンライン 編集部に所属されている秋山さまをお招きし、ブイキューブ マーケティング責任者兼「GAX」の責任者である佐藤岳(さとうがく)と共に、タイアップ記事広告の取り組みを振り返りました。

問い合わせ数は20%増。記事広告を実施する上で大切な「メディア選び」のポイントとは

GAX 代表コンサルタント 佐藤 岳GAX責任者 佐藤 岳

佐藤岳:2017年1月より、ブイキューブは本宮さんよりご提案いただいた『新しい「仕事のしかた」』という連載企画で、ITmedia NEWSでのタイアップ記事広告をスタートしました。

結果として2017年上期(1〜6月)では、問い合わせ数20%増を実現。2017年12月からはマーケティング効果測定プラットフォーム 「AD EBiS(アドエビス)」を導入し、より深堀りした効果検証を実施しましたが、ディスプレイ広告と比較すると間接コンバージョンが非常に多く、圧倒的な成果を上げている(下記図参照)ことがわかり、私自身も非常に驚きの結果です。

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本宮:ITmedia NEWSは時代の1歩先、2歩先を行くような、つまり「3年後、4年後の世の中を変えるようなテクノロジーとは何か」を紹介することを主軸としています。

そのため、ただ新製品が出ましたという記事よりも、いまは誰も注目していないけれど、これが3年後の社会を変えるかもしれない、といったものを紹介し、それによって読者が新しい動きを捉え、自らのアクションにつなげられるようなメディアを目指しています。

ブイキューブとのタイアップ企画がスタートした2017年1月当時は、まだ “Web会議” はいまほど浸透していませんでした。佐藤さんからご相談いただいたときに、これはITmedia NEWSの方向性とマッチするだろうということで、Web会議を取り入れてビジネスそのものを変えるムーブメントを紹介する『新しい「仕事のしかた」』という連載企画がスタートしましたね。

たとえば2017年1月に公開したコンテンツでは、「ママグロースハッカーズ」というWeb会議で繋がるママ集団を紹介しました。彼女たちはWeb会議を通じて一緒に仕事に取り組むかたわら、当時としては珍しいオンライン飲みなども楽しんでいました。いまでこそ、オンライン飲み会は当たり前になりましたが、公開当時は「こんなスタイルもあるんだ」と読者に新しい気づきを与えられるコンテンツでした。

佐藤岳:その次のコンテンツで取り扱ったのは、「Web面接」でしたね。Web面接もいまは当たり前ですが、当時は会って面接するのが当たり前でしたから、そういった新しい取り組みを紹介するというのは、ITmedia NEWSの方向性とあっていたからこそできたコンテンツだなと。

その後も「オンライン営業」や「管理職による地方でのテレワーク」といった切り口でのコンテンツを配信していきましたが、そういった切り口のコンテンツを2017年にやっていたというのが面白いですよね。

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秋山:またブイキューブとの取り組みでよかったのは、複数のコンテンツを配信できたことです。仮にテレワークの記事も佐藤さん自身のコンテンツだけであれば、読者には「Web会議の会社の人だからできるよね」と思われてしまいかねません。

しかし、地方でのテレワークの切り口では、本宮も実際にリモートワークを体験した記事を公開するなど、1つのテーマで複数の角度から記事化していったため、ITmedia NEWSが大事にしている読者のアクションにつながる見せ方ができたなと感じています。

本宮:そして2019年からはブイキューブとの新たなタイアップ企画として、ITmedia ビジネスオンラインにて「Web会議OKです」というキャンペーンを実施しました。

当時は社内のメンバー同士でオンラインミーティングをすることはあっても、クライアントとオンラインで打ち合わせをすることは珍しく、また、いままで対面で打ち合わせしていたクライアントに「次からはWeb会議にしましょう」とは言いづらい雰囲気でした。

そこでメールの署名欄に「Web会議、OKです!」と記載しようと呼びかけるキャンペーンを実施。「#Web会議OKです」というハッシュタグをつくってTwitterでも浸透を図った結果、著名人の方にもツイートしていただけたりと、ひとつのムーブメントが生まれました。

タイアップコンテンツからそうしたムーブメントをつくれたのは、メディアとしても非常によかったなと思います。

最終的には30%近い回遊率を実現。興味関心が深まれば、読者は能動的に他のコンテンツを閲覧する

本宮:ブイキューブのタイアップ記事広告は、潜在ニーズの掘り起こしを狙った取り組みでした。直接コンバージョンを獲得することを目的としない場合、 “ブランディング” という位置づけで取り組まれる企業もいらっしゃいますが、KPIが曖昧で、結果がわかりづらくなりがちです。

しかし、ブイキューブは記事広告から直接製品ページへ遷移した数だけでなく、間接効果含め、記事広告がどれだけコンバージョンに貢献したのかを数値で把握されていました。

当然ながら、記事を読んですぐに製品ページへ遷移する読者ばかりではありません。一度ページを閉じて、後日製品のことを思い出し、製品名や記事に関するキーワードなどを検索して、製品ページへアクセスするという読者も多くいます。

しかし、Web広告に取り組んでいる企業を見渡してみると、こうした間接コンバージョンをはじめ、タイアップ記事広告の効果を把握できていないというケースは少なくありません。

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秋山:ブイキューブのタイアップ記事広告では様々なテーマでコンテンツをつくりましたが、多くの企業が陥りがちなのが、1本の記事広告のみで認知獲得から製品理解、そしてコンバージョン獲得までを狙おうとしてしまうことです。

たとえば、同一製品であっても複数のターゲット層がいる場合は記事の切り口は異なってきますし、読者の課題解決となる切り口であれば事例コンテンツ、製品理解を狙うのであればレビューコンテンツなど、目的に応じたコンテンツづくりが重要です。

『新しい「仕事のしかた」』の連載では様々な切り口での記事広告配信に加え、サイドバーではブイキューブの関連する記事コンテンツへのリンクを設置するなど、カスタマージャーニーに沿って間接コンバージョンが生まれる設計をされていて、素晴らしいなと感じていました。

サイドバーには、製品ページや企業ホームページへのリンクのみを設置する企業が多いのですが、より理解を深めるために様々な記事コンテンツへのリンクを設置することで読者に違和感なく「もっと知りたい」と思ってもらえます。ブイキューブの場合は、クリック率も通常の5倍以上となっていました。

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佐藤岳:実際にお問い合わせいただくお客様と話していると、こちらが伝えたいことをすでに理解されているケースが多くあります。それはブイキューブで様々なコンテンツをすでに配信していて、お客様がそうしたコンテンツをご自身でご覧になられているからなんですね。

読者は何かしらの興味関心があって記事広告をご覧になられているので、興味関心が深まれば、能動的に他のコンテンツを閲覧されます。そのため、タイアップ記事広告のサイドバーのリンクはたくさん用意したほうがいいわけです。しかし、他社の記事広告を見ているとリンクが3つしかないといったケースが非常に多く、もったいないなと感じています。

秋山:コンテンツの数が増えれば増えるほど、多くの読者の興味に沿った情報を提供でき、回遊率が上がります。実際に「Web会議OKです」の場合、公開当初は20%程度だった回遊率が、半年ほどで30%前後まで上昇しました。

佐藤岳:タイアップ記事広告であっても、コンテンツである以上、その記事はマーケティング資産になります。配信して集客期間が終わったら誰も見ないというわけではなく、最新のコンテンツからのリンクであったり、検索からの流入であったりと、設計次第で継続的な流入が見込めます。

そのため掛け捨ての運用型広告とは違い、タイアップ記事広告というのは投資であり、そのコンテンツが営業パーソンとなって、勝手に営業してくれるのだという理解が大事だなと思います。

記事広告であっても検索結果1位は可能。購買行動プロセスに応じたコミュニケーション設計が重要である

秋山:「ブイキューブと同じようにタイアップ記事広告をやれば、同じ効果が出るのか?」といった質問をいただくことが多くあります。

佐藤岳:同じやり方をしても、効果が出るとは限りませんよね。自社の製品が解決する課題は何か、その課題を潜在的に抱えている読者はどういった人で、何を知りたがっているのか、などのコミュニケーション設計が極めて重要です。

そしてカスタマージャーニーの出発点は、課題を顕在化させることです。課題に気づいていなければ、ユーザーはカスタマージャーニーを出発しません。課題が顕在化すれば、あとはカスタマージャーニーに沿って、どういったコンテンツをつくるべきか、どういった表現がユーザーの態度変容を引き起こすのか、といったことを設計していくこと。

タイアップ記事広告も手法のひとつでしかないため、お客様の購買行動のプロセスをふまえた適切なコミュニケーション設計がなければ、タイアップ記事広告をやったとしても、効果を実感することはできないでしょう。

それでもどんな情報を発信すればよいかわからないということであれば、まずはお客様事例をつくることがよいと思います。お客様事例は同様の課題を抱えている読者にとって課題解決のヒントとなるコンテンツであり、読者が自分ゴトとして理解が深まりやすいコンテンツだからです。

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本宮:顧客の購買行動のプロセスに応じたコミュニケーションを設計するというのは、本当に重要だなと感じています。記事広告となると、どうしても売り手視点が強くなり、企業が伝えたいことばかりで、読者が求めていないコンテンツになってしまい、嫌われる広告になりかねません

私たちは通常記事だけでなく、広告記事においても「何がニュースなのか」という視点を大切にしています。そのため、広告主の発信したいことに対して、読者にとっては何が価値であるのかを明確にするべく、広告主とのコミュニケーションを重視しています。

そして読者が知りたいことを一番理解しているのはメディアであるべきだからこそ、タイアップ記事広告を検討されている企業は、メディアとコミュニケーションをとり、読者にとって何が価値になるのかという議論をすべきでしょう。

佐藤岳:ITmediaでのブイキューブのタイアップ記事広告をご覧になられた方からは、「これって広告だったんだ」と驚かれるんですね。広告って本来嫌われがちですが、SNSなどでの反応を見ていても、非常に好意的に受け取ってくださっている方が多いように感じていて。

それはブイキューブのコンテンツが、しっかりと読者の課題に向き合い、読者のモヤモヤした課題を解決できていたり、潜在的な課題が明確になる記事だったからだと思っています。

たとえばリモートワークによって、部下や同僚の働いている姿が見えないという不安がありますが、2019年2月に “空間共有” という考え方を提案するタイアップ記事広告を配信しました。

この記事広告をご覧になった方が「空間共有」についてのブログ記事を書いてくださったり、「空間共有をやってみた」といった実践ブログを公開してくださったりしました。

さらに、2020年4月に緊急事態宣言が発出され、テレワークに取り組まれる企業が増えたことで、2020年6月に「“見えない不安”を解消! テレワークの課題を解決する「空間共有」とは?」という記事広告を公開しました。

このコンテンツは記事広告であるにも関わらず、被リンクも増えていき、「空間共有」というワードで検索結果1位に表示されています(2020年3月19日時点)。

つまり記事広告であろうがなかろうが、読者にとって大切なのはコンテンツの中身であるということ。そのため、私がタイアップ記事広告をやるときは、ページレイアウトも通常の記事と同じもので行います。記事広告だからといってリッチコンテンツにする必要はないですし、わざわざ広告感を出す必要はないなと感じています。

「これからはオーディエンスの時代だ」BtoBマーケティングであっても顧客を理解し、顧客満足度を追求することが大切

佐藤岳:最近は、タイアップ記事広告も増えてきたなと感じています。メディアとしては、昨今のトレンドについて何か感じることはありますか?

秋山:広告手法というのは年々増えていて、どのメディアかを意識せずに読む記事も増えてきました。一方で、CPA重視、刈り取り施策一辺倒だったような企業が限界を感じ、コミュニケーション設計の重要性に気づいているケースが増えてきたなと感じています。

そこでタイアップ記事広告を実施するというときに、種々雑多な読者がいるメディアではなく、企業としてコミュニケーションをとりたい読者が集まっているかが重要です。逆に言えばメディアにとっては単にPV数などを追うのではなく、メディアテーマに沿った読者をいかに集めるかがいままで以上に大切になってくるなと思っています。

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本宮:私がこの仕事をはじめたときに、音楽好きの上司から、「ザ・ストーン・ローゼズというバンドは “これからはオーディエンスの時代だ” と言っていた。俺たちもそういうことだから、よろしく」と言われたことがあって(笑)。

でも、まさにそうだなと。いまはオンラインコンテンツも読者、すなわちオーディエンスが主役の時代。発信者側が表現したいことを打ち出せばいつかは当たるだろうといったやり方ではなく、コンテンツに触れる読者は何を求めているのかを理解した上で、情報を発信していくことが重要だなと感じています。

佐藤岳:オーディエンスが主役というのは、まさにそうですね。音楽関連でいうと、HubSpotの創業者であるブライアン・ハリガンが好きなグレイトフル・デッドというバンドがいて。

彼らは数枚しかアルバムを出していないんですけど、1年中ライブツアーをしていて、観客には自由に録音していいよ、というやり方をしていたんですね。

すごいのは、彼らがライブの内容を毎回変えるということ。そのため、録音したとしても毎回違う内容になりますし、観客は毎回新しい体験ができるので、何度もライブに参加する熱狂的なファンも多いんです。

オーディエンスが主役だと捉えていたからこそ、いかに観客に楽しんでもらえるかを考え、それを実践していたバンドなんだなと。しかも、いまでこそ興行でマネタイズするというのは一般的ですが、それを1960年代にやっていたのがグレイトフル・デッドでした。

そしてBtoBマーケティングにおいても、実際に問い合わせや発注を決断するのはヒトですから、自社の顧客を理解し、いかに顧客満足度を高められるかという発想を大切にしていきたいですね。本日はありがとうございました!

お話を伺った本宮さん、秋山さんと佐藤岳

お話を伺った⼈

本宮 学 氏

本宮 学 氏 アイティメディア株式会社 プロフェッショナル・メディア事業本部
編集局 NB編集統括部
統括部長 兼ITmedia NEWS編集長

プロフィール

1988年、千葉県生まれ。
新卒入社したアイティメディアでエンタープライズITや先端テクノロジー分野を取材し、新メディアの立ち上げにも参画。2016年4月からITmedia NEWS編集長。在職中にメディア規模を2倍、事業規模を2.4倍に成長させる。2019年1月からはITmedia ビジネスオンライン編集長も兼務し、同年10月から現職。NEWS/ビジネスオンライン両メディアの統括責任者として、情報発信と企業マーケティング支援の両面を担う。

秋山 未里 氏

秋山 未里 氏 アイティメディア株式会社 プロフェッショナル・メディア事業本部
編集局 NB編集統括部
ITmedia ビジネスオンライン編集部
編集記者

プロフィール

発想力やコミュニケーション力を生かせる仕事を探す就職活動の過程でアイティメディアと出会い、2017年4月に入社。メディア営業として、IT、製造、エネルギー業界など幅広い領域のお客さまのプロモーションを支援。特にコンテンツの企画を得意とし、合計約120本のタイアップ記事広告に携わった。2020年9月よりITmedia ビジネスオンライン編集部へ異動。営業経験がある編集記者として、営業、マーケティングの領域、また総務、人事、流通業界の記事の編集と執筆を担当している。