2021.10.03

400近いBtoBマーケティング施策を振り返り、改善に繋げていくKPIレポートはどう生まれたのか

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400近いBtoBマーケティング施策を振り返り、改善に繋げていくKPIレポートはどう生まれたのか

こんにちは、BtoBマーケティング支援サービスを提供するGAXマーケティング株式会社 代表取締役の佐藤岳です。

私は2015年11月にブイキューブへ入社。これまで私がブイキューブでBtoBマーケティングを推し進め、2020年にはマーケティング活動からの新規受注を2016年比で9倍成長を実現するまでに至った過程を、事例を交えながら様々な切り口でご紹介してきました。

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なお、ブイキューブでは製品が複数ある他、お客様の業界や業種も様々であるため、マーケティング施策も非常に煩雑で、300や400といったコンバージョンポイントが存在します。そうしたお話をするとよく「そんなに多くの施策を展開して、どうやってマネジメントしているのか」と聞かれます。

コンバージョンポイント 353件 - 2020年10月時点そこで今回は、数百ものコンバージョンポイントをマネジメントし、施策の振り返り・改善を推し進めていくために、ブイキューブで実際に行っているKPIレポートの取り組みについてご紹介いたします。

ブイキューブであった実際の課題

実は私がブイキューブに入社した2015年当時、マーケティング本部はすべての施策をエージェンシーに丸投げしており、予算消化のために施策を展開、さらには施策の振り返りを行わないような状況でした。

そのため、案件化に繋がるようなマーケティング活動ができていませんから、営業はマーケのリードを後回しにするという、社内間での対立も生まれていたのです。

なぜ営業はマーケのリードを後回しにするのか。組織横断での「顧客理解」が大切な理由

マーケティング本部が施策の振り返りを行っていなかったのは、KPIを集計する仕組みがなかったからではありません。実際、2013年にはCRMを導入しており、マーケティング活動から何件の見込み客が獲得できていて、見込み客から案件が何件生まれて、どれくらい受注したのか、といったことが見える化できる仕組みはありました

しかし、当時のマーケティングプロセスは細かく設定されており、各ステップの粒度もバラバラであったため、KPIが煩雑化してしまい、結果的にマーケティングプロセスが形骸化。マーケティング本部はKPIを追いかけずに、ただ施策を実行するだけとなっていたのでした。

また、当時の施策レビューを見返すと、新たな事実が判明します。それは施策ごとに「必達目標」と「ストレッチ目標」というふたつの目標設定がされていたことです。

そのため、「必達目標には達成しているのに、ストレッチ目標には達成していない」といった謎のレビューが生まれ、現場メンバーにとっては必達目標を目指せばいいのか、ステレッチ目標を目指さなければいけないのかと目標が曖昧になり、それに伴って何が課題であるのかも曖昧になってしまっていたのです。

つまり、KPIを集計する仕組みはあるものの、目標やKPIが曖昧であるがゆえに、正しく施策を振り返り、課題を見つけ、改善していくといったPDCAを回していくアクションが取れていなかったのでした。

施策を正しく振り返り、改善していくために取り組んだこと

そこで以前のnoteにも書きましたが、2015年12月より私はブイキューブのBtoBマーケティング組織の立て直しに着手。そして2016年4月よりKPIレポートの整理・再設計を進めていきました。

まず行ったのが、細かすぎて形骸化していたマーケティングプロセスの見直しです。7ステップあったマーケティングプロセスを5ステップへ変更し、追うべきKPIを絞りました。

さらに各ステップごとに目標を再設定。以前まであった必達目標とストレッチ目標という2つの目標設定から、確実に目指すべき目標のみを設定し、そのためにどういったアクションを取るべきかを明確になるようにしました。

マーケティングプロセスを見直し

週次でPDCAを回していけるよう、週次レポートのフォーマットも刷新していきます。以前まではKPIとして追うべきでない数値も、定例の数字報告でレポートされている状況でしたが、フォーマットの刷新により、

  • Interaction:マーケティング施策に反響があったお客様=見込客
  • MQL:見込客の中で、スコアが高い見込みのお客様。
       インサイドセールスがフォローする対象
  • SQL:インサイドセールスがフォローして案件化した状態
  • Opportunity:営業担当が案件をフォローし商談化した状態
  • Closed Won:商談が受注し注文書をいただいた状態
  • Closed Lost:残念ながら受注できなかった状態

それぞれのマーケティング施策毎に数値を累積、前週比、前年比で見れるようにし、施策軸で何がどれだけ進捗しているのかを見える化するようにしました。

キャンペーン大分類別の数値レポート(例)

そして、コンバージョンポイントとなるキャンペーンをすべてリスト化し、こちらも同じく週次でレポートを行うようにしました。

そうすることで、たとえばセミナーマーケティング担当者はこれまでのセミナーマーケティング施策を振り返ることで、ゼロから企画するよりも精度の高い企画を立案できたり、過去に成果が出ていたセミナーと同じようなセミナーを開催するといった判断ができたりと、プラニングにも役立てられるようにしていきました。

キャンペーン別数値レポート

こうした数値を毎週眺めることによって、「資料DLキャンペーンからの案件率はどれくらいなのか」「セミナーからの案件率はどれくらいなのか」といったことが感覚で掴めるようになってきます。

ある施策の結果が芳しくなかったときでも、過去の類似施策と比較したりすることで、施策の内容がお客さまのニーズにただマッチしていなかったのか、たまたまお客様のタイミングではなかっただけなのか、などのディスカッションを行うことができるようになります。

また、上述の通りブイキューブでは複数の製品があったり、それぞれの製品ごとにも様々な業界のお客様がいらっしゃいます。たとえば金融業界のお客様であれば導入検討期間が数年要することも珍しくないため、アプローチ方法や追うべきKPIも異なってきます。

300、400といったキャンペーン数がありますから、ただマーケティング種類別の集計するのでは限界があるため、業界特化や用途特化などのMDセグメントという活動軸別を設け、MDセグメント別にマーケティング活動を企画し、KPIを集計することで全体のマネジメント最適化を図っています

そうすることで、金融業界を対象としているマーケ、インサイドセールス、営業担当は即座に自分たちの追うべき数値を確認でき、より効率的なPDCAを回すための連携が可能になります。

パイプラインマネジメントの定義(例)

なお、マーケ、インサイドセールスは自分たちの活動がどれだけ営業活動に貢献しているのかを見るべく、マーケであればInteraction(見込客) / MQL(高確度な見込客)という量と質を追いかけつつ、 SQLへの転換率などもKPIとして見るようにし、またインサイドセールスはSQL(案件化) / Opportunity(商談) / Closed Won(成約)のセールスプロセスを細分化したパイプラインマネジメント定義における6ステージも見ています。

パイプラインマネジメント定義の各商談ステージは、営業部門のマネジメントで使われるもので、インサイドセールスは自分たちがつくった案件が価値あるものであったのかどうかを知るべく、ステージ1から3への転換率もKPIとして追いかけるようにしました。

こうしたKPIをもとに営業部門との定例ミーティングを行うことで、営業部門が求めているリードが送客できているのかをすり合わせることができますし、マーケティング活動の営業への貢献度が見える化することで、より営業と連携したマーケティング活動ができるようになっていくのです。

そして設定したKPIを達成するために、何をいつやるのかといった活動計画に落とし込み、着実に実行していくといったことを推し進めていきました。

マーケと営業の連携が強化。より効率的なリードジェネレーションが実現していった

このようにKPIレポートを整理・再設計していったことで、マーケティングメンバーは行った施策の何が良かったのか悪かったのかを振り返れるようになり、より成果を最大化していくための改善施策を打てるようになっていきました。

また以前までは目標が曖昧で、目標が目標として機能していませんでしたが、週次で各KPIをまとめていったことで、過去データから新たに目標設定を立てるといったこともできるようになっていきました。

そして「営業はマーケのリードを後回しにする」というくらい、営業から信頼されていなかったマーケティング本部でしたが、KPIを営業にも共有し、送ったリードが案件や受注にどう繋がっていったのか、マーケティング活動の貢献度を見える化したことで、営業からの信頼を獲得していきます。

その結果、「こうしたリードがほしい」など営業側からマーケに要望が出るようになったりと、マーケと営業の連携が強化。営業の要望に合わせたマーケティング企画を立案したり、営業と一緒になってプラニングを進めていくようになるなど、お互いの生産性を高めていくためのディスカッションが生まれ、マーケティング活動に無駄がなくなっていき、より効率的なリードジェネレーションが実現していったのです。

そうした組織間の連携が強くなっていたことで、良い成果が出たときは営業とマーケが一緒になって喜ぶことができるようになり、個々のモチベーションも高まっていきました。

まとめ:資産となるKPIレポートが、再現性のあるマーケティング施策の展開を可能にする

あらためてKPIレポートの取り組みにおけるポイントは、大きく下記の3つです。

1.マーケティングプロセスを見直し、KPIをシンプルにする
2.明確な目標設定
3.週次で振り返れるレポートフォーマットの用意

成果に繋がるマーケティング活動を展開していくためには、行った施策を適切に評価し、改善のためのアクションに落とし込んでいく必要があります。しかし、そもそも明確な目標設定がなく、またKPIが正しく設定されていなければ、施策の何が良かったのか悪かったのかが見えず、改善のための仮説も立てられません。

振り返りの際に目標が高すぎたのかどうかを判断し、調整しながらPDCAを回していくためにも、まずは仮の数値でもいいので、目指すべき目標を明確に設定することが重要です。

そして週次で振り返れるレポートを用意し、毎週しっかりと施策を振り返ることで傾向を掴むことができ、施策の良し悪しが感覚的に理解できるようになれば、より精度の高い仮説をもとにした改善のためのディスカッションが可能になるのです。

また、施策軸でのKPIレポートが蓄積され、より効率的なリードジェネレーションを実現するナレッジが貯まっていけば、マーケティング活動が属人化せず、再現性のある施策展開が可能になります。

精度の高いマーケティング活動が実現する上で、KPIレポートは資産となります。施策をやりっ放しにするのではなく、適切なKPIを設定し、レポートに落とし込み、成果最大化に向けたPDCAを回していきましょう。今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

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