導入事例は、製品やサービスを導入した実際の顧客が「選定の理由」、「導入の決め手」や「導入効果」を紹介するコンテンツです。課題が顕在化した見込み客にとって、実際の顧客が課題解決した「実例」を紹介する「導入事例」は、製品やサービスの選定において示唆とヒントに富んだ道標となります。
製品やサービスの導入を検討している見込み客の情報ニーズに応えた内容が網羅された導入事例は、引き合いや案件の創出をアシストする効果を期待できます。
本記事では、受注を呼び込む導入事例の作成方法について、デザインとインタビューのテンプレートを交えながら公開後の活用方法まで詳しくご紹介します。導入事例制作に関するセミナー動画や講演スライドを公開しています。
年間40件の導入事例を内製してきた元本部長が共有する効率的な導入事例の作り方
導入事例とは、製品やサービスを導入した実際の顧客が「選定の理由」「導入の決め手」や「導入効果」や「感想」などを顧客自身の肉声として語ります。そのため、その導入事例を読む買い手の立場として共感しやすく、高い納得感を得やすいコンテンツです。GAXマーケティングとアイティメディアの調査によると、製品やサービスの導入を検討している見込み顧客は「導入事例」を重視しています。
顕在化した課題の解決策を探している見込み客にとって、実際の顧客が課題解決を成し遂げた「実例」である「導入事例」は、製品やサービスの選定において、示唆とヒントに富んだ道標となります。
クチコミを見つけにくい、BtoB製品やサービスにおいて、「導入事例」は、身近でリアルな先達の知恵、サクセスストーリーと言えます。だから「導入事例」が効くのです。
導入事例は、顧客が抱えていた課題の内容、解決策の模索、比較検討と評価選定、導入後の感想などが顧客自身の肉声として一人称で語られます。
顧客自身が課題を克服した「リアル」が記され、なおかつ文面には「お墨付き」や「保証」がにじんでいます。同じことを「売り手」が言っても説得力がないのは、それらが欠如しているからです。
「うちが抱えている課題と同じだ」「そうだ。そこでうちも悩んでいる」。導入事例を買い手が自身の立場に置き換えて読み進める過程でそんな気づきを与えられたら、顧客との距離はもうその時点で縮まっています。
GAXマーケティングとアイティメディアの調査によると、導入事例は、製品・サービスの導入検討の「稟議申請」段階で最も読みたいコンテンツフォーマットとして選択されました。
今さら聞けない「導入事例とは?」なぜ導入事例が必要なのか、導入事例の書き方、導入事例の効果について
先の調査によると、導入事例では「選定ポイントと選定理由」が重視されていることが明らかになりました。
公開されている導入事例の多くに「選定ポイントや選定理由」が含まれていないと、GAXマーケティング 代表の佐藤岳は述べています。
GAXマーケティング株式会社は、アイティメディア株式会社の共同で、製品サービスの導入検討に関するITmedia読者を対象としたアンケート調査を行いました。
製品・サービスの導入検討に関する アンケート調査報告書のダウンロード
https://www.g-ax.jp/download/itmedia-report
導入事例が具体的で共感を呼ぶものであればあるほど、売り手としては、事例を読んだ別の顧客の引き合いや受注が期待できます。最もシンプルで効率的なのは「導入事例の内容と同じことをやりたい」という問い合わせです。
「事例と同じことをやりたい」という引き合いであれば、この時点の顧客は自ら学習し、すでにリサーチ、比較検討、選定を終えています。つまり「指名」で問い合わせてくるケースが大半です。もうこの時点では競合比較も済ませ、相見積もりも必要ありません。
効果的な導入事例といっても、やみくもに量産して列挙すれば良いわけではありません。その導入事例を通じて自社の強みやオリジナリティ、サービスや理念などを顧客の立場から、
顧客自身の言葉で表現してもらうことが肝心です。
なぜなら、課題を抱える見込み客は導入事例を通じて、事例で登場する会社がどんな方法でその課題を解決したのかに関心があり、もっと深く知りたいと思っているから。顧客の声で語られる導入事例は見込み客にとっては、最上のケーススタディと言えます。
逆に言えば、売り手としては、自社の強みや評価が伝わりやすい、読んでほしい顧客の事例を選別して取材依頼することが重要になってきます。導入事例制作までに踏むべきプロセスを以下の4段階に整理します。
導入事例制作にあたり社内関係者との意識合わせするためのシート - Google ドキュメント
導入検討の振り返りシートを用いて、商談に携わった担当者、関係者に確認し、その結果をまとめていきます。以下の「振り返りシート」をご活用いただければ、取材のポイントがあらかじめ整理され、導入事例の骨子が固まります。
【製品・サービス導入経緯の振り返りシート】XLTXファイルをクリックしてダウンロードできます。
受注案件の振り返りシートをGoogleスプレッドシートでも公開しています。
リード数は1.5倍へと成長。お客様、営業担当からも喜ばれる「導入事例」はいかにして生まれたのか?
導入事例を作るにあたっては、必ず盛り込まなければならないいくつかの要素があります。以下に代表的なものを整理しますが、特に強調したいのが、導入事例の肝になる「選定ポイントと購入の決め手」です。
これによって、事例の読み手は、自社に置き換えて同様の課題へのブレークスルーを具体的にイメージすることができ、かつ選定しやすくなります。
導入事例に盛り込むべき構成要素を改めて整理します
したがって、導入事例の構成要素をシンプルにまとめると以下のような文脈で整理することが可能です。
受注を呼び込み、成果につながる構成要素を盛り込んだ導入事例とはどんなものなのでしょうか。その代表例をここで紹介します。いずれも、顧客のプロフィール、顧客の課題と売り手の提案・サポート解決、ソリューションの概要、選定ポイント、提供内容、導入後の感想が網羅しています。
写真家やデザイナーといったプロ向け製品「Adobe Photoshop」「Adobe Illustrator」などで圧倒的シェアを誇るアドビ。「Creativity For All」を掲げて販売方式を売り切りからサブスクリプションに転換、顧客のすそ野を広げました。
初心者をサポートするために無料の「ことはじめオンライン講座」を2017年から運営。ネクプロを活用し受講申し込みから事後アンケートまで、ワンストップで実現。1講座につき500人ほどで、その90%近くから「満足」「とても満足」との評価を得ています。
老舗リーダー企業が語る導入理由、選定の決め手は格段の説得力があります。
茨城県の西南端に位置し、人口8158人、3384世帯が暮らす小さな町、五霞町の町役場。住民の情報を取り扱う職務性質上、高度な情報セキュリティ対策を導入していましたが、メール1通あたりの確認作業に5分を費やしており職務上大きな課題でした。
五箇町役場は、サイバーソリューションズのメール無害化ソリューションを導入したことで対策コストを4割減しつつ年間2万5000時間を節約できるようになりました。
自治体特有の課題や解決策を分かりやすく語っていただいたことで、同事例は他の多くの自治体からの引き合いに繋がっています。
直面していた3つの課題、導入後の成果、導入の決め手がコンパクトに整理され、見やすいチャートで強調されています。「お客様の声」には「これまで2週間かかっていた決算作業が1週間に短縮できている」など具体的な成果が反映されています。さらに、選定ポイントと選定理由が明確に述べられています。
「経理財務シェアードをプロジェクト発足から支援」ミサワホーム株式会社様 | 事例 | ビジネスブレイン太田昭和様(BBS)
名古屋を拠点とするプロバスケットチームでのクラウドソリューションの導入事例です。まず事業を象徴するキービジュアルで読者の目を引き付け、「バスケットボールチームでの導入事例である」ことを直感的に表現しています。
Salesforceの導入による成果を「来場者数前季比123.6%」と具体的な数字で強調しています。「お客様の声」では、マルチクラウドで貯めたデータを「攻め」の施策に生かす好循環について語られています。
名古屋ダイヤモンドドルフィンズ株式会社 | toBeマーケティング株式会社
テレビ会議システムを扱うアバー・インフォメーション様での導入事例です。
この事例の最大のポイントは、取材先を内田洋行に選定した点です。同社では30年前からテレワークの実証実験を行い、多様な働き方の実現に向けて試行錯誤してきた経緯があるため、「テレワークの先駆者」として語られる導入理由、選定の決め手には格段の説得力があります。
コロナ禍でのオフィスの在り方の変容はタイムリーな話題であり、当時のBtoB企業にとっては大変共感を得られる切り口でした。「自己実践して最良のものを、お客様に提案」と顧客に語ってもらい、違和感なく製品情報に導くストーリーになっています。
株式会社内田洋行 導入事例 | アバー・インフォメーション株式会社
「導入事例の取材を依頼する方法がわかりません」「依頼しても協力してくれないお客様が多い」などといった声をいただくことがあります。安心してください。正しいプロセスで導入事例の取材を依頼すれば、8割のお客様が取材に応じていただけます。
導入済みのお客様に改めて取材のアプローチをすることは「売りっぱなし」状態を回避し、顧客満足度を再確認するアフターフォローの機会にもなります。
導入事例によって取材先企業様の先進的な取り組みを表現することで、イメージ向上にもつながるため、他社に先んじて導入を進めた顧客が「導入事例」に登場することで、その業界内の先駆的ポジションを改めて印象付けられるような内容になれば理想です。
導入事例は「鮮度」も重要で、内容が古くなりすぎないように一定期間を置いて再取材し、アップデートしていくことも有効です。
以下では、依頼→打ち合わせ→取材・撮影→確認→公開といった導入事例の制作プロセスの一連の流れを紹介します。
導入事例制作の進め方
導入事例の取材依頼状テンプレート
顧客への取材アポが無事とれたら、顧客の社内関係者と当日どのようなインタビューを行うかについて打ち合わせをしましょう。お互いの意識を合わせるために以下のシートに沿ってヒアリングしておくと取材がスムーズに進みます。
BtoBで導入事例を積極的に作っている会社が増えています。しかし、せっかく作った導入事例をフル活用できているでしょうか。次なる戦略は「展開」「転用」です。
1つの導入事例が「点」だとしたら、それを「線」にし、いずれは「面」にしていくためにさまざまな展開が可能になります。うまく展開できれば、導入事例は「メディア」として独立し、加速度的な拡散が期待できます。
印刷物であることの最大の利点は、「回覧される」ということです。実際にGAXが導入事例制作をご支援しているパナソニック・ソリューションテクノロジー株式会社様では、取材先のお客様から「導入事例を100部ください」と申し出があり、お客様とつながりのある同業他社に配布していただくという新たな展開が生まれました。
同業他社は、まわりの企業が導入しているということを知ると「自社も導入しなくては」という心理にかられます。そして、導入事例は導入決定の後押しとしても有効です。そうした機会を逃さないためにも、導入事例は印刷物として用意すべきなのです。
導入事例のプレスリリースの書き方|配信する3つのメリット&配信事例3選【PR TIMESテンプレート】 | PR TIMES MAGAZINE
街を守る消防の最前線が“映像共有”でスマート化 「無線だけでは伝わりにくい情報を瞬時に共有できる」 - ITmedia NEWS
導入事例アップデートで同業種の案件数が増加。お客様からは「100部ください」と言われる導入事例の中身とは?!
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2020年4月、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言に伴い、多くの企業や組織がテレワークを導入しました。従来、オフィスや事務所に集まって執務する形態から自宅でのテレワークにシフトしたことで、戸惑った方も多かったことでしょう。
今回ご紹介するケースは、テレワークによりコミュニケーションがうまくいかないという問題が顕在化した中小企業の社長様から、テレビ会議システムを活用した事例をご覧になってお問い合わせいただいたケースをご紹介します。
テレワークにより、雑談が出来なくなって困った社長様から、以下のような問い合わせをいただきました。
この社長様が問い合わせするまでに、いつどこを経由してどのWebページに辿り着き、どのページをご覧になったのか、Webアクセスログから確認してみます。
いつ?:2020年7月18日 午前6時13分
どこから: Google /自然検索経由で
どうした?:在宅勤務社員のサボりを防ぐというテーマのぺージに来訪
このページは当時「在宅勤務 サボり」という検索クエリで2位に表示されていました。
いつ?:2020年7月19日 午前8時22分
どこから: Google /自然検索経由で
どうした?:「空間共有」に関するタイアップ記事広告へ来訪
このページは当時「空間共有」という検索クエリで2位に表示されていました。
いつ?:2020年7月19日 午前8時23分
どこから: Google /自然検索経由で
どうした?:ブイキューブのコーポレートサイトのトップページへ来訪されました。
いつ?:2020年7月19日 午前8時24分
どこから:タイアップ記事広告から
どうした?:2社の導入事例ページへ来訪
タイアップ記事広告のテーマ「空間共有」に関連する、2社の導入事例ページに来訪されました。
このお客様の問い合わせ内容と閲覧履歴から、社長様ご自身が抱えている課題の解決策を探している過程で具体的な解決策を認識し、その解決策の「導入事例」を閲覧したことで、問い合わせに至ったことが分かりました。
ニーズ:「テレワーク実施」で従業員の働きぶりが見えない
行 動:「在宅勤務 さぼり」キーワード検索
結 果:働きぶりを見える化する「空間共有」を知る
ニーズ:解決策と思われる「空間共有」について知りたい
行 動:「空間共有」で検索
結 果:「空間共有」について解説した記事広告を読む
記事広告からリンクされている導入事例を読む
ニーズ:テレビ会議システム「空間共有」で課題解決できるか?
行 動:問い合わせ
導入事例は、製品やサービスの製品・サービスの導入検討の過程で参考にされる手段であり、内容面では「選定のポイント」と「選定の理由」が重視されています。一般的には、自社と同じ業種で、同じ課題を解決した事例が3〜6件ほど読まれるケースが多いようです。
導入事例は、導入されたお客様自身が売り手側企業に代わってそのバリュープロポジション(競合企業では提供不可能な、自社ならではのお客様への提供価値)を説明してくれるコンテンツであることから、引き合いや受注の創出に直結します。是非、皆様も実践してみてください。
GAX代表 佐藤 岳は、前職の株式会社ブイキューブにおいて2016年6月に導入事例をリニューアルし2020年12月までに137件の導入事例を制作しました。
導入事例の制作プロセスを整備し、計画的に進めることで大きな成果を得られます。このウェビナーでは、導入事例の制作方法から見込客の創出方法までの実際の進め方をご紹介します。
セッションの講演時間は約40分です。全編を通してご覧いただければ嬉しいですが、ご興味があるポイントだけを視聴することもできます。そこで、必要なポイントを把握できる視聴方法をご紹介します。