B2Bマーケティングの支援で、セミナーの企画や運営、開催後のフォローに関わる中で、以前から気になっていることがあります。
それは、セミナーの評価を「満足度」の5段階だけで終わらせてよいのか、ということです。
満足度は、参加者の全体的な印象を把握するうえで役立ちます。ただ、「満足した」という回答だけでは、何が評価され、次に何を改善すべきなのかまでは分かりません。
そこで私は、コンテンツを評価するために、次の2つを分けて聞くことを提案します。
今回は、この2つを確認する設問と、回答を次の企画やコンテンツの改善につなげる方法を紹介します。
セミナーアンケートでよく見かけるのが、「とても満足」から「不満」までの5段階で評価する設問です。
しかし、同じ「満足した」という回答でも、その理由はさまざまです。講師の話し方がよかったのか、運営がスムーズだったのか、新しい知識を得られたのか。それとも、業務に役立つ具体的な方法を知ることができたのか。
これらを一つの「満足度」にまとめると、評価が高かった理由も、改善すべき点も見えにくくなります。
満足度を聞くこと自体が問題なのではありません。コンテンツの改善に使うなら、何を評価したいのかを明確にし、それに合った設問を用意する必要があると考えています。
参加者は、タイトルや告知文を読んで、「この話が聞けそうだ」「この課題を解決するヒントが得られそうだ」と期待して申し込みます。
その期待に応えられたかを確認するのが、1つ目の設問です。
ここで聞くのは、期待していた話と同じだったかではなく、事前の期待に対して内容をどう評価したかです。期待と異なる内容でも、期待を上回る評価になることはあります。
また、期待に応えられたことと、実務の参考になったことも、必ずしも同じではありません。
「期待通りの内容ではあったが、業務でどう活用するかは分からなかった」という場合もあるでしょう。反対に、「期待したほどの内容ではなかったが、実務に役立つヒントは得られた」という場合もあります。
この違いを捉えるために、2つ目の設問を用意します。
この2問によって、「期待に応えられたか」と「実務の参考になったか」を、それぞれ確認できます。
なお、実務との関係をまだ判断できない参加者が想定される場合は、「判断できない」「自分の業務には該当しない」を別の選択肢として用意することも考えられます。「どちらでもない」という中立的な評価とは分けて扱い、追加した選択肢の回答数も別途確認します。
回答結果から、私は「期待充足率」「期待超過率」「実務参考率」の3つを見ることを提案します。いずれも評価の平均ではなく、特定の選択肢を選んだ回答者の割合です。本記事では、それぞれを次のように定義します。
| 指標 | 集計対象の回答 | 算出方法 |
|---|---|---|
| 期待充足率 | 設問1の「期待を大きく上回った」「期待をやや上回った」「期待通りだった」 | 対象の回答者数 ÷ 設問1の有効回答者数 × 100(%) |
| 期待超過率 | 設問1の「期待を大きく上回った」「期待をやや上回った」 | 対象の回答者数 ÷ 設問1の有効回答者数 × 100(%) |
| 実務参考率 | 設問2の「とても参考になった」「参考になった」 | 対象の回答者数 ÷ 設問2の有効回答者数 × 100(%) |
本記事では、それぞれの設問で5段階の選択肢を回答した人数を有効回答者数とし、未回答は含めません。設問2に「判断できない」「自分の業務には該当しない」を追加した場合も、これらは実務参考率の分母から除外し、その人数を併記します。
期待超過率は期待充足率の内数です。両者を足し合わせるものではありません。
また、これらはアンケート回答者の評価です。参加者全体の評価と同一視せず、回答者数と回答率も併せて確認します。開催ごとに比較する場合は、設問や集計ルールをそろえることも必要です。
期待充足率は、内容が事前の期待を満たしたと評価した回答者の割合です。
事前の期待に対して、参加者が内容をどう評価したかを確認する指標になります。ただし、この設問だけでは、テーマが想定と違ったのか、説明の深さや具体性が不足したのかまでは分かりません。
評価が低い場合は、講演内容に加え、タイトルや告知文が生んだ期待とのずれも確認します。
期待超過率は、内容が事前の期待を上回ったと評価した回答者の割合です。
独自の知見や切り口、具体的な事例などが、参加者にとって新たな発見につながったかを考える材料になります。
ただし、この指標だけでコンテンツの質を断定することはできません。事前の期待が低かった可能性もあるため、実務参考率や自由記述と合わせて見ることが大切です。
実務参考率は、セミナーの内容が実務の参考になったと評価した回答者の割合です。
コンテンツの実務的な有用性を、回答者の評価から確認できます。ただし、あくまで「参考になった」と感じた割合であり、実際に業務で活用されたことまでを示すものではありません。
3つの指標を確認するだけでなく、同じ参加者の2つの回答を掛け合わせると、さらに具体的な振り返りができます。このときは、両方の設問で5段階の選択肢に回答した参加者を対象にします。
たとえば、次のような組み合わせから、改善の仮説を考えられます。
設問1が「期待通りだった」、設問2が「あまり参考にならなかった」または「全く参考にならなかった」という組み合わせです。
この回答が多い場合、内容は期待した水準だったものの、業務への活用につながる具体例や実践方法が不足していたのかもしれません。
自由記述で理由を確認し、必要に応じて、業務での活用例や実践の手順を充実させることを検討します。
設問1が「期待をやや下回った」または「期待を大きく下回った」、設問2が「とても参考になった」または「参考になった」という組み合わせです。
この回答が多い場合、実務に役立つ情報はあったものの、期待していた深さや範囲には届かなかった可能性があります。告知から生まれた期待と、講演内容にずれがあった可能性も考えられます。
コメントを確認し、タイトルや告知文を見直すべきなのか、講演内容を深めるべきなのかを検討します。
回答の組み合わせだけで、改善の原因を特定することはできません。そこで、次のような任意の自由記述設問を添えることを提案します。
上記の回答を選んだ理由を教えてください。参考になった点や、不足していた点などがあればご記入ください。
2問で改善の方向を探り、自由記述で理由を確認する。この順番で見ることで、数値だけでは分からなかった改善のヒントを得られると考えています。
セミナーアンケートは、開催結果を報告するためだけのものではありません。回答者が内容をどう評価したのかを確かめ、次の企画やコンテンツを改善するためにも活用できます。
「満足度が高かった」で終わらせず、期待を満たせたと評価されたのか、期待を上回ったのか、実務の参考になったのかを分けて見る。そのうえで、回答の組み合わせと自由記述から、改善の仮説を考えます。
告知を見直すべきなのか、講演内容を深めるべきなのか、具体的な活用方法を増やすべきなのか。数字だけで結論を出さず、評価の理由まで確認することが大切です。
次回のセミナーでは、まずこの2問と任意の自由記述を採り入れ、次に改善する点を考えてみてはいかがでしょうか。